≪三節;王の謀略≫
〔それは―――少し奇妙に思えたことでした・・・。
それもそのはず、先程までは『官位の買収』に対して、憤っていたはずの州公が・・・
セキの一言に、ナニを感じ取ったのか、急に買収されてしまった者達の官位を、聞き出そうとしたからなのです。
すると――――〕
ア:なんと―――イク殿が司徒に??!
セ:はい―――、そのほかには州牧や刺史といった者までもが、この度ので中央官の三品官になる始末で・・・
ア:(これは―――・・・)なるほど・・・ショウ王様は、これを狙っておられたのか―――
セ:は??なんですと?!
ア:・・・・セキ殿、これは実によい機会です。
今回の件に限っては、お受けになったほうがよろしい!
セ:えっ??! はぁ?? ど、どうしてそんな・・・・
〔あれほど―――、官位の買収に憤っていた者が、今度は一転してそのことに賛同し始めた・・・。
それは、端から見ていても奇妙に感じたものであり、相対峙していたセキにとっては、
まるで、狐か狸に抓まれたかのような錯覚に陥っていたのです。
ですが――― 実は、このこと・・・つまりショウ王の張り巡らせた謀(はかりごと)に、
アヱカ・・・いや、女禍様が気付いたことに他ならなかったのです。〕
ア:よろしいですか、セキ殿―――、ようく御覧になって下さい・・・。
セ:は・・・あ―――
ア:イク殿が『三公』の一つに就任した事に伴い、セキ殿も要職に―――・・・
それに、少なからずも、その一派の方々が王の周囲(まわ)りを固めている・・・。
セ:あ―――! あああ・・・・ま、まさにこれは!!
ア:はい。
これで・・・『王』という“本丸”の“内堀”は、イク殿の一派で固められた・・・
そして、これでボウ殿の一派と互角に渡り合える事が出来るのです。
あとは―――・・・“外堀”の・・・各州を預かる、私たち州公が互いに連絡を取り合えれば・・・
セ:今以上に、より強固なものになる―――・・・と?
ア:そうです。
〔そう、それこそは―――
=連環の計=
この計略を、佞臣の一派に飲ませるために、ショウ王は、あえて最も信頼の於ける臣下のこの二人を、“官位で買収した”ように思わせ・・・
その実は、“王室”と“玉座”を、『獅子身中の蟲』から護るために、周囲を固めていたというのです。〕
セ:しかし―――それでは・・・王に於かれては、ナゼにこのように回りくどい事を・・・・
ア:・・・・心当たりならあります。
セ:は―――?
ア:古えより、『先ず敵を欺くなら味方より』・・・と、あります。
そして、それはものの見事に、王の意中にはまった――― つまり、ショウ王様の狙いは“これ”だったのです。
セ:(あっ・・・)な、なるほど!!
ア:ですが・・・このことはなるべく口外にはしないように―――・・・
そうでないと、折角の王の心遣いも、無に帰する恐れがございますので―――・・・
〔こうして―――この秘事は、アヱカとセキの心の内にしまわれておくこととなり、
また、セキのほうでも、明日という日を待たずして、イクに面会を求め、
手のひらを返したように、以下の事を受諾したのです。〕