≪二節;審問会の最中(さなか)に―――≫
〔その一方―――、こちらウェオブリでは・・・
ガク州公アヱカにかけられている嫌疑を質(ただ)すための、『審問会』が開かれている最中でした。〕
審:それでは―――州公、あなたが直に、賂(まいな)いの催促をしたわけではないのですな?!
ア:はい、そのようなこと、身に覚えのないことでございます―――・・・
〔確か・・・自分は、州公である自分の持ち物を払い下げたお金を、民達に分け与えた―――
その嫌疑を晴らせるために、ここに赴いたのではなかったか・・・
アヱカは、そう心のうちでも思いながらも、自分に着せられた濡れ衣を晴らすために、
忌憚なく、事実だけを述べていたのです。〕
審:(ふうむ―――・・・)では――――
ア:<ああ―――また・・・また同じような事を聞いてくるなんて・・・・>
女:<全くだ、こんな下らないこと、早々に切り上げたいのに・・・>
ア:<でも・・・今ここで無下にあしらいでもすると―――>
女:<そうだね、全くもって馬鹿馬鹿しい事だけど―――>
〔半ば、アヱカも女禍様も、繰り返される同じような質疑に、いい加減辟易していたものの、
いわゆるところの『審問』とは、このような類なのだから・・・と、自分に言い聞かせていたのです。
すると、その時突然――――〕
―――女禍様―――
ア:(はっ―――!!)
―― ガタッ〜☆ ――
審:いっ―――いかがなさいましたかな?ガク州公。
ア:も・・・申し訳ありません―――今、少し・・・・催しまして・・・・・。
審:はあ? “催して”―――とは、この審問会の前に、用を足されなかったのですかな?
ア:は――――はあ・・・申し訳・・・・ありません・・・・。
審:(はぁ・・・)それでは、すぐに済ませてきなさい。
ア:はい、有り難うございます―――
―――あっはっはは―――
〔耳ではなく、直接的に頭の中に響いて来たある声に、アヱカは思わず席を立ち、審問官達を驚かせたのです。
ですが、それは―――今、遠隔地にいる、自分の部下からの“直接の緊急交信”<ダイレクト・エマージェンシー・コール>・・・・
それであるが故に、急に席を立ちあがったのです。
しかし、その言い訳の仕方が、なんとも苦し紛れに出てきたものなので、他の審問官たちから失笑を買ってしまったようです。
そして―――ようやく一人になれる、落ち着ける場所にて――――・・・〕
ア:{――――・・・一体どうしたと言うんだ、キリエ。}
キ:{あっ―――女禍様、良かった・・・通じた・・・}
ア:{それよりも、どうしたと言うんだ、このような時に、エマージェンシーをかけてくるなんて・・・}
キ:{申し訳ありません―――実は・・・}
〔審問会の最中に、自分を呼ぶ声・・・そのことに何事と思いながらも、
“個室”にて、ご自分のアーティファクト<カレイド・クレスト>に関渉し、間もなく交信先を特定してみれば、
やはりそれは、“万が一”のときのためにガク州に居残り、宜しく防衛役を買って出ていたキリエからなのでした。
しかも、このときの交信内容も宜しく―――・・・〕
ア:{ナニ? カ・ルマが?}
キ:{はい・・・彼奴等めも、いよいよ本腰を入れてきたものと思われます。}
ア:{う〜ん・・・いや、それはどうだろう――― 彼等としても、確証が持てるほどの情報は得てはいないはずだ。
だけど、自分たちの威光を知らしめておくために・・・それに、“小手調べ”の意味合いも含めて、此度は軍を動かせた―――
と、こう私は思うのだけれど・・・}
キ:{なるほど―――}
ア:{けれど、幸いな事に、私―――は、元より、お前も復職している事までは、知られていないはずだ・・・
だから―――わかっているね・・・。}
キ:{ははっ―――主の命のままに。}
ア:{その前に―――相手の・・・カ・ルマの陣容は判っているのか。}
キ:{・・・・おそらく、五千は下るまいか―――と。}
ア:{そうか、五千・・・・それに引き換え―――}
キ:{はい、今すぐに動かせられるのは、五百がやっと・・・}
ア:{ひとたまりも――――ないな・・・}
キ:{ですが、機智と覇気をもってして当たれば・・・・}
ア:{そうだな、ではやってくれるな。}
キ:{御意―――!}
〔こうして、互いの交信を終えると、それぞれの持ち場に・・・
アヱカは、また取り留めもない審問会の場に――――キリエは、カ・ルマを迎え撃つべく、かの地に――――
戻っていったのです。〕