≪四節;孤軍奮闘≫
〔それはそうと―――この砦を攻略するために、砦正面に布陣をし、攻める機会を虎視眈々とうかがっているこちらでは―――〕
斥:バルモウ様―――! どうやら目下の砦は、もぬけの殻のようにございます!
バ:(バルモウ;カ・ルマ七魔将の一人、アナウスの属将の一人、今回のこの方面の攻略を任されている者である・・・が、実はこの者、元々―――)
なんだと?! おのれ・・・一杯喰わされたか―――えぇい!ならば躊躇する事はない、一気になだれ込んでしまえ!!
〔どうやら―――今にして、眼前に翻っている旗が、それだけの存在である事を知るにいたり、
謀られていた事に気付かされた敵陣営。
もはや、一刻の猶予もならず―――と、見たか、大挙として砦内になだれ込んだ・・・・のですが―――
そこに待ち構えていたのは、言うまでもなく―――・・・〕
ヒ:へっ――― 他人様(ひとさま)の庭に上がりこんできて、どういう了見かい―――
敵:な―――何者だ、お前・・・うわっ―――?!
ヒ:へっ――――へへへ・・・オレ様は、ガク州にその人ありと恐れられた、ヒ=チョウ=ベイガンという者よ!!
オイ、てめぇら―――自分の命が惜しけりゃあ、尻に帆を巻いてとっとと失せな―――!!
敵:こっ・・・このぉお〜〜―――!
敵:言わせておけばあぁ〜〜―――!!
敵:死ねや! この痴れ者が!!
ヒ:フン―――・・・たったそれしきでエぇ〜〜、このオレを跪かせるものと思うなぁ!!
けりゃあぁ〜〜―――!!
敵:うわわぁ〜〜・・・・
敵:ぐほぁ―――・・・
〔その・・・虎のような一喝は、自分と、敵を、否が応にも焚きつけ、
自分に群がってくる者には、愛用の“双顎”をして、討ち参らせていたのです。
しかし―――前衛にはそれで事足りていたとしても、次々に溢れんばかりに現れてくる増援に、
流石にこれはたまらじ―――と、見たか・・・〕
ヒ:(くっ―――・・・司馬の言ってた通りになってきたぜ・・・。
これじゃあ、いくら討ったところで限(きり)がねェ・・・)
こいつぁ―――ひとまづ、退くか・・・
〔こうして、頃合を見計らって、自分率いる小隊と共に、撤退を始めた頃―――・・・〕
ヒ:ん―――? 一人足りねェようだが?
兵:ああ・・・実はその者、両足を負傷してしまいまして・・・
ヒ:ナニ?するってぇと―――置いてきちまったのか?!!
兵:は、はい・・・・自分はもうダメだから―――と・・・
ヒ:(チッ―――)・・・なら、お前等はこのまま州城へと戻ってろ、オレはすぐさま引返し―――そいつを助けてやる!!
〔自分の与えられた役割は、見事果たした―――けれど、部下の一人がいないことに気付き、
ヒはたった一騎で、その負傷兵のところへと向かっていったのです。
その一方―――この砦より、やや離れた地点で、“ある事”を待ち構えていたキリエは――――〕
キ:・・・・砦の方向から煙が上がったか――――
では・・・いよいよこちらの出番―――と、いうことね。(ニッ)
〔砦の方角より、立ち昇る黒煙を見・・・まんまとカ・ルマの軍勢が、砦内に入ったことを確認し終えたキリエは、『してやったり』―――
と、そうつぶやくと、近くの茂みに入り・・・・その場に力なく倒れこんでしまったのです。
そしてこちら―――部下の兵卒一人を助けるために、砦に戻ったヒは、上手くその者を拾い上げたものを、
お約束通りに、周囲(まわ)りを敵兵に囲まれてしまったのです。〕
敵:おぅ―――見ろよ、こいつ・・・・
敵:ああ〜・・・先程、オレ達を散々っぱら、小バカにしてくれた野郎だぜ・・・・
敵:あのまま逃げたかと思いきや―――案外本物の馬鹿かもしれねェなぁ?!!
―――ぎゃ〜っははは!―――
ヒ:(ケッ―――)面白れぇことぬかすじゃあねェか・・・。
お前等、このオレがまだ生きてるっつうのに、もう勝った気でいやがるたぁ・・・
おめでたい頭ン中してるようだなぁ―――?!!
敵:あんだと?! このヤロウ・・・
敵:ンな、なめたことをほざけてるばヤいかい!
兵:し・・・将軍、申し訳ありません・・・この私一人のために―――・・・
ヒ:はっ! お前ぇもなに言ってやがんでェ・・・司馬殿も言ってたろうが、『一兵も損ねることなく』・・・ってよう。
兵:し、しかし、これでは我ら二人―――
ヒ:・・・・まあ、そういうな、司馬殿にこってり絞られるのは、あの世に逝ってからにしようや――――なぁ?
敵:はんっ―――!ようやく観念しやがったか・・・なら―――死ね!!
〔四方八方―――見渡す限りの敵・敵・敵・・・・これではもう、生きて帰還できるのもままにならずと見たか、
己れの生涯に、幕が降りるのを覚悟した、ヒとその負傷兵。
そして、その二人に容赦なく刃を加えようとする、カ・ルマ・・・・〕
―――だが―――
―――しかし―――
このとき
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はるか天空より
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彼等を睨みつけていた
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ある存在が
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いたのです