≪三節;劇団の花形≫
〔そして―――それを満た紫苑は・・・妙な胸騒ぎに駆られたのです。〕
紫:あ―――婀陀那様??!
婀:(にやり)これ―――この劇団の団長はおるか!!
団:あ・・・は、はい、こちらに―――
婀:妾はこの者が甚(いた)く気に入った、ゆえに城に連れて帰りたいのじゃが―――
どうであろうか?
団:えっ―――??で・・・ですが、しかし、ルリさんはうちの看板でして―――
婀:無論、タダで―――とは言わぬ。
それに見合うだけのものは払おう、そうじゃな・・・・(ゴソゴソ)
―――ではとりあえず・・・(ドサ・ドサ・ドサ)これで、いかがかな?
団:え゛っ――――!!? さ・・・30万?!
婀:うむ・・・今は生憎と手持ちがこれだけしかないのでな、とりあえずは“前金”という形じゃ。
団:ええっ?!ま・・・“前金”??
婀:うむ・・・残りの70に関しては、城の者から、しかと手渡すであろうぞ。
団:な・・・70?? す、すると〜〜―――全部で100!!
婀:そういうことじゃ、じゃが・・・それでも足らぬというのであれば、直接そなたが城にまで来るがよい。
必ずやその不足分も支払うであろう。
団:いっ、いいえ〜・・・滅相もない。
こ、これだけあれば十分―――後の半生、遊んででも暮らせますよ。
婀:(にやり)おお―――そうか。
では、商談成立・・・という事で、約束通りこの者は城に連れて帰りますぞ。
〔それはまるで、『人身売買』のようなものでした。
一箇の人の身を、その金銭でやり取りする・・・と、いうのは、まかり間違えば“犯罪”そのもの・・・
けれど、このとき婀陀那がそれで解決しようとした背景には、
今、自分がひそかに進行させつつある計画と―――この劇団の目玉を、自分が貰い受けることで、その劇団が経営上苦しくなるであろう―――
と、いうことを見抜いた上で・・・だったのです。
そして、その名―――“威風堂々”を冠したる城の中に、身を置くこととなった者は・・・〕
ル:(す・・・すごい―――さすがは『マジェスティック』と、呼ばれるだけの事はあるわ・・・。
それに、私を引き抜くに際しても、少なからずの強引なヤリ口―――噂に聞いていた以上だわ・・・。
それに―――宮中に入り込めれば、これまで以上に詳しい報告も・・・)
〔そう・・・そこには、今まで仲良く、他の劇団員達と笑い語り合っていた者はおらず・・・
ナニにおいても、客観的に物事を判断できるように訓練された者―――がいたわけなのです。
ですが―――これから、自分を引き抜いた存在が、よもや自分より前に立とうとする者・・・であろうとは―――〕