≪四節;公主の誘い≫
〔この城―――アルル・ハイム城へ来て、婀陀那と一緒に劇団の天幕に来ていた者・・・『紫苑』の案内で、
一見しても、その部屋が公主・婀陀那の部屋であるとわかる処へと、通されたルリは・・・〕
ル:(し―――しかし、この人たち・・・それも、公主様は一体何を考えているのだろうか?
他人を真似ることしか能のない私を、高く評価してくれているのは、ありがたいけど―――・・・)
〔そう、“一芸”に秀でるとは大したものだけど、他人の真似をするというのは、実はこの時点では、まだ認められていなかったのです。
それを・・・大金をはたいてまで、宮中に入れさせたかったのは、やはりそれだけの理由があるのだろう―――・・・
と、そう思っていた矢先、この部屋の主でもある婀陀那が入室してきたのです。〕
婀:どれ―――待たせたな。
どうじゃ、何か一つ・・・飲むか?
ル:(えっ―――?!)
紫:・・・・婀陀那様、まだ陽もお高いうちから―――
婀:なんじゃ・・・相も変わらず、難(かた)い事を申すな紫苑。
紫:そうは申されましても―――・・・
ル:・・・・あの、一つお伺いしたいのですが―――
婀:――――ナゼ、大金を支払ってまで、そなたの身を買おう・・・と、してことであろう。
紫:婀陀那様―――!!
ル:(ピク)――――はい。
婀:(フ―――・・・)(ニヤリ)
それよりも――――・・・・妾も、そなたに一つ訊いてみたきことがあるのじゃが・・・
ル:はぁ―――なんでしようか。
〔そこで・・・まづ婀陀那がしたこととは、今までとは格段に違う場所に来て、固まっているであろう客人の緊張をほぐすために、
自らを砕けて接してきたのです。
―――が、ルリもそれに劣らじ・・・と、どうして自分如きを、大金を払ってまで引き抜いたのか・・・を聞いたのです。
でも、婀陀那はすぐにはそれに応えようとはせず、逆に新たな質問を、ルリに投げかけたのです。
では、その質問―――とは・・・〕
婀:そなた―――妾になれるか?
ル:えっ―――?!私が・・・公主様に?!
婀:――――うむ・・・そうじゃ・・・・。
紫:・・・・・・。(チャ・・・スル〜〜〜――――)
〔それは・・・・公主・婀陀那の真似をする―――と、いう意味合いではなく、婀陀那“本人”になれるかどうか・・・と、いうこと。
では、その言葉の意味するところとは・・・?
そして、ルリが結論付けた事とは・・・?〕
ル:それは――――今の時点では、出来ません。
婀:・・・・できぬ―――じゃと?
ル:・・・・ハイ。
その理由の一つに、私はあなた様の事を、よく知らない・・・
婀:ふぅむ―――確かに・・・な。
では、どうすれば妾に―――・・・・
ル:その前に―――先ほどの私の質問には、お答えになって頂いておらないようですが・・・
紫:そなた・・・婀陀那様に対して、なんと言う口の利き方を―――
婀:よせ―――紫苑。
紫:でッ・・・ですが、しかし―――
婀:・・・・・。(ジロ)
紫:うっ―――ぅぅ・・・
婀:・・・そうじゃな、どうしてお主を、大金を払ってまで・・・で、あったが―――
その、真の理由を聞きたいか・・・
ル:はい―――願わくば・・・
〔ルリは―――その時・・・『自分は婀陀那の事はよく知らない、だから出来ない』と応えたのでした。
そのことに婀陀那は、『ならば、どうすれば自分自身になれるか』・・・と、問いかけようとしたところ、
今度はルリから、『さっきの自分の質問には答えてもらっていない』と、したのです。
すると・・・傍らで聞いていた紫苑は、『無礼である』―――と、一喝したのですが、それを婀陀那は制したのです。
そして―――徐ろに、自分がどうしてこうしたかったのか・・・その本音を、語りだしたのです。〕