≪七節;ヴェルノアに流れる不穏な空気≫
〔こうして―――宜しく婀陀那の“影”となったルリは、婀陀那がこれから国を脱出(で)るまでの、約半年間余りを掛け・・・
この国の置かれている状況や、この国で働いている諸百官(国政務官・州公等)の人事・・・
果ては、公主・婀陀那が、普段や会議などでする、細かな振る舞いなどを、筆記することなくその総てを頭の中に叩き込んだのです。
それから―――暫らく時は流れ・・・
ルリが婀陀那に引き抜かれて、半年余り経った頃―――・・・
ヴェルノア北部の州『ジグ』にて、狩りを行っていた主と従者は、予ねての計画宜しく、行方不明となり・・・
すると―――やおらして、ヴェルノアに不穏な空気が・・・〕
玖:(玖留津(クルツ)=ドゥリタラーシュトラ=ハーネスト;28歳;男;この当時は公軍司馬)
何を考えておるのですか―――肆牟厨(シムズ)卿!!婀陀那様が幽閉しおかれた、あの方を解放するとは・・・一体どういう了見からか!!
筮:(筮屡拿(ゼルダ)=ヴァイシュラヴァナ=ヴァレンティノ;26歳;女;この当時は太史令)
そうですとも―――! 公主様不在をよいことに、専横が過ぎる事です!!
肆:(肆牟厨(シムズ)=ラーヴァナ=アシュクロフト;42歳;男;この国の録尚書事)
御二人とも・・・ナニを申されておるやら・・・(ククク―――)
公主様がおられないのを知ったら、今まで力で押さえつけていた者達が、騒ぎ出しはしませぬかな・・・?
しかも―――大変困った事に、諫議大夫様までもおられぬようになった・・・・とは。(ククク―――)
玖:む――――むむぅ・・・。
筮:うぅ――――・・・・。
肆:ですが―――・・・私とて、本来はこのようなことはしたくはないのです。
かつて、中華の国に弓引く―――などといった、反逆者を上に頂くのは、本意ではないのですよ。
玖:し―――白々しい・・・。
筮:よ・・・よく抜け抜けとそんなことを―――
肆:・・・・――――まあ、公主様ご本人が見つかりでもしたなら、このことは反故にすればよいことではありませんか・・・。
なににせよ――――この国を治むる方が不在と知られれば、例えこのヴェルノアとて、一溜まりもございませぬからなぁ・・・・。
〔この国―――ヴェルノアに漂ってきた、不穏な空気を醸し出した張本人こそ、
この国の政務を鑑みる最高政務官・録尚書事の、 肆牟厨(シムズ)=ラーヴァナ=アシュクロフト だったのです。
そう・・・つまりは、この“軍事大国”ですらも、そのスキあらば国を乗っ取らんとしている、不逞の輩がおり、
その計画も着々と進みつつあったのです。
しかし―――かの二官、玖留津(クルツ)・筮屡拿(ゼルダ)を含む、
公主サイドの者達は、取り分けてその勢力に、拮抗する力を持ち合わせていなかったのです。
しかも・・・服心中の腹心である、諫議大夫・衛将軍の紫苑までも欠いてしまっていては・・・・
これでは、この大国の命運も、早、絶たれたか――――・・・と、そう思っていたら・・・・〕