≪八節;蟲退治≫
〔公主・婀陀那、失踪より、約一ヶ月後・・・・〕
ガサ・・・≧
安:(えっ?)あっ―――あなた様は!!
公:ふふ・・・いかがいたしたのか、安瑠鄭四阿(アルテイシア)、妾の顔に、何か付いておるのか――――・・・
安:(安瑠鄭四阿;当時は、まだ女官の一人)
い・・・いえ―――それよりも、良くご無事で・・・・
早速、玖留津(クルツ)様と筮屡拿(ゼルダ)様に、御取次ぎを―――
公:うむ―――宜しく頼む・・・
〔自分の背後で、何かしらの物音がしたので、何事か―――と、振り向いてみれば、
それは・・・一ヶ月前に行方の知れなくなっていた、自分たちの主『公主様』であったことに、
当時はまだ女官の一人だった安瑠鄭四阿(アルテイシア)は、驚いたのです。
そして、この女官の急報により駆けつけた二人の反応は―――〕
玖:こ、これは―――!
筮:婀陀那様―――!!
公:む―――・・・二人とも、迷惑をかけたな。
まづはそのことを詫びよう・・・済まぬ―――
玖:そ―――そんな・・・詫びなどと・・・我等がもう少ししっかりとさえしていれば、
あの者に遅れはとらなかったものを・・・。
筮:そうですとも―――! 非はあなた様にあるのではなく、むしろ私たちにこそあるのです。
公:(よい部下をお持ちだ・・・なのに、彼女はこの国を棄てた―――)
いや―――やはり非は妾にある。
なぜならばな―――妾が、一時的に失踪した経緯・・・その背景には、妾がおらなくなったスキに、蟲共が蠢(うごめ)きはしまいか―――
と、思っておったのじゃが・・・(フッ・・・)まんまと罠に掛かりおったわけじゃな。
玖:(な―――なんと・・・)それでは―――
筮:総て計画のうち・・・だったというわけですか―――
公:そういうことじゃ。
しかも、こういったことは、いつぞやもれる危険性があるのでな―――
それゆえに、そなたらまでにも、話しておかぬこととしたのじゃよ。
玖:そうでしたか――――でも、それでは紫苑様は?
公:(来たか―――)・・・あんずるな、あやつにはまた別命を持って動かせておる。
ゆえに―――このこと、他言は無用じゃぞ・・・。
〔そこにいたのは紛れもなき――――いや、その実は、婀陀那の姿をした、『禽』=カケス=こと、ルリ・・・だったのです。
そして、自分―――今は婀陀那の姿をしている者は、『自分がいなくなったことの裏には、不届き者を見極めるための手段』と言及しておき、
また、腹心の者がいなくなった背景にも、『別の命令で動かせているまでのこと』としておいたのです。
しかし―――おかしなことは続くもので・・・
国の簒奪を目論んでいた首謀者は、すぐさま処断か―――と、思われていたのに、
その罰は“厳重注意”までにとどめおかれており、それ以上も、それ以下もなかったのです。
それゆえに、このことはサスガに、他の官吏達からの非難もあったのですが、
その代わりに見せしめとして・・・彼―――肆牟厨(シムズ)以外の、この事変に加担した者は、
その位の高低に関わらず、皆処罰の対象となったのです。
そう―――これこそは、これ以後謀反の起こさないように、その者達の“牙”を抜いておいた事に他ならず、
次第に肆牟厨一派は、政治の舞台から姿を消していく事となったのです・・・。
そして――――場面は変わり・・・現在――――〕
紫:(ふぅ・・・)しかし、あなたのお陰で、不埒者共を一掃出来た―――そのことは感謝しておくわ。
肆牟厨は、前王の頃よりの執政補佐官だったものね・・・
だから―――前王・・・婀陀那様のお父上を幽閉しおかれたことが、彼の胸の内に、わだかまりとして残っていたのでしよう。
ル:いえ――――私も、以前に公主様より言われていなければ、躊躇(ためら)いがあったかもしれません・・・。
紫:そう―――・・・でも、私がここに戻ってきたからには、私の指示に従ってもらうわ。
〔紫苑は・・・遠隔の地『夜ノ街』にて、母国でナニが起こりつつあり、その後の経過までも、具(つぶ)さに知っていたのです。
(それは、婀陀那も同様に・・・)
そして―――これからは、『夜ノ街』に降りかかりつつある、ある危機を救うために、
公主・婀陀那の姿をしている者の口から、ある事を言わせるために、彼女が動く事となるのです・・・・。〕
To be continued・・・・