≪二節;=禽=その伝達手段≫
紫:そ―――それでは・・・まだ生きていらっしゃる・・・と??
公:・・・・いえ、実はそれもまだ―――つまり、生死の分別がついていないのです。
ですが、死んでいたら死んでいたらば・・・で、私の御役目もゴメンですから、
その時はこの姿を返上させてもらっていたことでしょう―――
紫:な―――っ・・・?!!あ、あなた・・・他人様の足元を見るようなことを・・・・
公:だって―――そうじゃないですか、その存在がないにもかかわらず、その存在の真似事をしていたら、
それこそ、先ほど紫苑さんのいってたことと、変わりありませんからね。
紫:うっ―――・・・
公:でも――――その前に・・・第一私はこの国の家臣、ましてやこの国の人間ですらありませんしね・・・。
ただ、お金で雇われた者・・・ですから、何もそこまで義理立てする必要もないでしょう。
紫:そ―――んな・・・(ガク)
〔もし・・・公主様が死んでしまっていたのなら、自分はこの姿を返上し、この国からいなくなる―――
それは、紫苑にとっては最も辛辣で、重みのある言葉でした。
でも、それは理にかなってはいたのです。
なぜならば、ルリはこの国の家臣でも、民でもないのだから・・・
それをルリの口から聞いたとき、紫苑はがっくりと肩を落とさざるを得なかったのですが、
また新たな疑問が芽生えてきたのも、事実だったのです。〕
紫:――――そういえば、あなた・・・今、『この国の民ではない』といったわよね・・・。
では、どこの―――
カタ―――・・・カタカタ≧
公:(ぅん?)ふふ―――っ、丁度よいところに、新たな報が来たようですよ―――
紫:(え・・・っ??)新たな―――報??
すぅ――――・・・・
紫:な・・・っ、ナニ?この紙片――――は・・・
公:(ふふふ・・・)まあ――――そこで何が起こるか、御覧になってください。
〔その―――ルリの気になったある言葉・・・・『この国の民ではない』――――
そのことに紫苑は、ではこのルリなる芸達者が、どこの出身なのか―――問い質そうとするのですが・・・
このとき、その疑問が払拭されるようなモノが、向こうからやってきたのです。
でも、そのあるモノ・・・とは、たった一葉の紙片―――なのでした。
しかし、このとき紫苑が奇妙に感じたのは、その紙片が、あたかも己れの意志で動いていたか・・・のように見えたということ。
つまり―――それは・・・
でも、その紙片は、そんな紫苑の疑問を余所に、締め切った窓の、その僅かな隙間から入り込み――――
床に着地したと思った、その途端――――!〕
ツィ〜〜―――― ポゥゥ・・・・・
紫:えっ?!あっ??!ナニ?! か・・・・紙切れから―――人が?!!
雉:お久しぶりですね―――カケス・・・
カ:ええ――――本当に・・・白雉。
紫:なっ―――なんですって?!“白雉”? “カケス”??
雉:(ん―――?)おや?どうしたのですか、この人は・・・
カ:ああ、その人なら心配は要らないわ、今、私が『模倣』をしている人の従者だから。
それより―――何か判った事が?
雉:――――はい。
実は・・・先立って『ギルド陥落』の報をもたらしたとは思うのですが、
まだその時には首領の“首”または“死骸”は見つかっていない―――としていましたよね・・・・。
カ:ええ―――その通りね・・・。
雉:今回のは、それに関することなのですが・・・改めて、あそこで死亡した者の中には、
“そのようなものは見当たらなかった”―――と、いうのです。
カ:ふぅん――――その確認・・・誰が?
雉:=鵺=・・・副長です。
カ:そう―――あの人が・・・。
では、私は、もう暫らくこの姿と―――この国に留まらなければならない理由が・・・
雉:はい―――そこのところは、主上も“宜しく頼む”・・・と―――
カ:(ふぅ・・・)はい、判りました――――。
それでは、私のほうも任務を続行いたします。
雉:それでは――――
紫:ちょ―――ちょっと待って?!!
雉:はぁ―――? ・・・・なんでしよう。
紫:い、今―――あなたたち・・・一体何の事を・・・
そ、それに、婀陀那様の亡骸は見つかっていない―――って、本当なの??
雉:・・・『婀陀那様』? 何者の事なのです?
カ:私よ―――わ・た・し。
雉:・・・・なるほど、この国の“公主”であり、またギルドの“女頭領”であった者・・・ですか。
さあ―――まあ、確かにその死体は見つかってはいないとはしていましたが・・・
近隣の国でも、そのものを見た―――とする報せもまだ・・・。
カ:そう・・・それでは、私自身が、今どこにいるか―――新たに任務の一つに加えてはもらえませんか?
雉:・・・・そのことでしたら、すでにお頭の=梟=と、=鵙=の二人が動いております。
カ:ええっ??あの二人・・・? それはまた、珍しい組み合わせね―――
紫:(えっ??!=梟=に・・・=鵙=?? 一体―――何人の仲間が・・・)
雉:フフッ―――まあ、確かに・・・でも、それは、いつも=鵙=と組んでいる=鵺=が単独で動いていますので―――
カ:あっ―――そうか・・・では、引き続き、探索のほう宜しくお願いします。
雉:はい―――では、そちらのほうも・・・
カ:了解――――
〜ぼうっ〜
〔何よりも驚いたことは、一見すると普通の紙片が、人の姿に“成った”・・・ということ。
しかも宜しく、こちらの状況も把握し、白雉といった者と―――今、公主の姿を模しているカケスといった者の、
その二名による会話には、全くといっていいほど“温度差”“時間差”を感じることはなかったのです。
そして―――少なくともその時に判った事には、未だに生死の分別がついていないとしながらも、
婀陀那は生きている―――と、いうこと・・・。
それに、自分が今までに聞いたこともない、その名・・・・『カケス』『梟』『鵺』『鵙』『白雉』・・・・
と、言った者達の事―――
そうこうしているうちに、同じ仲間内であろうと思われる、この二人の会話が終了し、
その―――白雉と名乗っていた者が、この紙片にかけていた、“呪”の効果が消失するとともに、
紙片も跡形もなく燃え尽き、この人物の姿(つまるところの“立体映像”)も失せてなくなったとき・・・
紫苑はルリにあることを聞いたのです。〕
紫:――――ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・。
ル:はい―――なんでしよう。
紫:あなた―――ギルドが陥落した・・・と、言う報、それを知ったというのも・・・
ル:(フッ―――)ええ、その通りです。
あの一報は、その噂によってこの国に流布されるよりも早く、私たちの仲間によってもたらされたモノ・・・
紫:そう―――それよりも、あなた カケス と呼ばれているようね。
それに、先ほどの者も 白雉 と・・・。
ル:つまり、私たちが“何者”であるか―――と、いうことですか。
――――我々の集団は、その“名”の由来から、『禽』と呼ばれている・・・いわゆる“諜報集団”です。
紫:“諜報”?スパイ?? では・・・私が以前、ギルドにて始末し置いた者の仲間―――・・・
ル:(フフ・・・)しかし、あなたも私が何者であるか―――そう知り置いたのは、“今”の時点で・・・ですよね?
紫:(・・・・と、いうことは―――)違う―――?
ル:少なくとも―――見つかってしまうようなヘマはしておりません。
それに―――本来なら、我々が“何者であるか”が知られてしまった時には、
自らの命を絶たなければならないか―――あるいは、知ってしまった者を弑さねばならないのですが・・・
今は、そのことは、お互いに不問とすることにいたしましょう―――
何も、あなた程の方が、そのことを計算できないとは思いませんので・・・。
紫:(フ・・・)言うわね―――。
ル:いえ・・・こちらも、まだ生きねばなりませんので・・・。
〔でも―――それは紛れもなく、『カケス』と『白雉』以下―――の者が、“何者”であるかということ。
それに対し、カケスことルリは、包み隠さず総ての事を話したのです。
そう―――自分以下の者は、“諜報集団”であると共に、現在自分がここにこうしているというのも、
婀陀那に金で買われた・・・その理由以外に、“諜報集団”の主からの=任務=でいることに他ならないのです。〕