≪三節;『雪月花』の三将≫
〔軍事大国で、執政として辣腕を振るっている、公主様の身代わりをしている者と、その懐刀的存在の者が、
そのわだかまりをなくしていた頃―――
また、その時を同じくして、ヴェルノアの北に位置する『列強』<ハイネス・ブルグ>。
実は、この国でも、今回の事態に関し、僅かばかりの動きがあったようです。
その“動き”―――とは・・・現在より四日前・・・〕
将:ナニ?!それは本当か―――?
将:ああ、なんでも関の兵が、らしいのを見たってなぁ。
リ:(リリア=クレシェント=メリアドール;21歳;女;この国の“武”の要である『雪月花』の三将の、“月”の宿将。
実は、とある国の武将に傾倒している。)
どうしたの―――そんなところに屯(たむ)ろして、何を話しているの。
将:ああ、これはリリア殿・・・
将:いえ、実は―――
将:・・・北西の方角より、早馬が駆けて行ったようでして――――
リ:(“北西”??)・・・フからの? ―――で、その早馬は・・・?
将:それが―――どうやら、わが国に用があるのではなく、素通りをしたようで・・・
リ:(“素通り”―――)・・・と、いうことは、ヴェルノアに?
将:ええ・・・しかも、その騎乗者、よほどに急(せ)いていたらしく・・・
将:その容姿までは見せてはいないようなのですが、あるモノを掲げていたようで―――
リ:その“あるモノ”とは―――?
将:それが――――・・・(ボソ)
リ:(なんですって―――!!)公主―――“様”の・・・?
将:――――・・・。(コク)
リ:(そんな・・・バカな?)・・・・では、その使者に取り次いだ者を、至急私の前に連れてきて頂戴―――
〔この国・・・ハイネス・ブルグの都にある城『ハイレ・リヒカイト城』・・・別名を『白亜城』と讃えられた、白き荘厳な名城の一角で、
この国の将校達が数人集まり、あることを囁きあっていたのです。
そんなところへ現れたのが、この国の“武”の頂点に立ち、隣国にも引けをとらないとされている『雪月花』の三将のうちの一人、
“月”の宿将であるリリアだったのです。
そして、何を話しているのか問い質したところ―――
この国の“北西”から来た騎乗者が、この国に立ち寄りもせず、“南”の方角へ・・・と、抜けていった―――
しかも、その者は余りにも急いでいたらしく、その容姿までをよく見せてくれなかったものの・・・
あるモノ―――そう、ハイネス・ブルグの南に位置する、ヴェルノア公国の公主様の印綬を掲げていた―――と、いうのです。
そして、そのこと―――『公主様の印綬を掲げていた』という事に激しく反応をしたりリアは、
まづ、ナニにおいてもあることを確かめるために、その時にその騎乗者に、直接取り次いだ兵士に会うようなのです。〕
リ:――――あなたが・・・そうなの?
兵:はい・・・そうですが―――(ゴクリ)
リ:そう―――・・・それで、その早馬の者、一体誰だったのか―――分かる?
兵:えっ―――いや・・・でも、見たのは“公主の印綬”だけで、その者の容姿までは・・・
それに、大きな布衣を被っていたもんで・・・誰であるかまでは、ちょっと――――
リ:――――では、何か他に目に付くようなモノは見なかった?
兵:目に付くようなモノですか―――?そうですねぇ〜・・・
あっ、確かそういえば、チラッと見た佩剣の飾りに、“双頭の鷲”と―――
リ:(“双頭”の・・・“鷲”!! ヴェルノアでも、余程の高官が付けている・・・という、あの?!!)
兵:あと―――・・・指環でしたねぇ。
それも、イチョウの葉が二枚重なったような土台に、アメジストが・・・
リ:(!!)・・・・そう、分かったわ―――有り難う。
〔その関所の兵士は、たどたどしい記憶ながらも、自分のうちに感じていた、
最も印象に残っているものだけを、包み隠さず申し述べたのです。
それは―――その騎乗者の、刀剣の鞘に飾られた『双頭の鷲』と・・・
同じくして、その指に填められた『二枚のイチョウが重なり合った土台』に『アメジスト』・・・
この二つの物品で、リリアはその騎乗者が、“誰”であるかを特定できたのです。〕
リ:(なんてこと―――・・・“イチョウの土台”とは、『諫議大夫』の印・・・それに、“アメジスト”だなんて―――
まさか・・・その騎乗者って、公主様と常に行動を供にしてきて、
もう既に亡くなられたとの噂まで飛び交っているとされている・・・“あの方”―――??)
――――・・・誰かいますか?!! これより“月”が、“雪”と“花”に、至急相談をしたき議があると、
そう伝えて下さらない―――?!