≪四節;色めき立つ白亜城≫
〔そして、これからリリア自身が、ある大胆な行動に出るために、
残りの二人・・・“雪”と“花”の承諾を得るため、会談をするようです。〕
セ:(セシル=ベルフラワー=ティンジェル;22歳;女;三将のうち、“花”の宿将)
どうしたの、リリア―――私たちに相談・・・て。
イ:(イセリア=ワィトスノゥ=ドグラノフ;24歳;女;三将のうち、“雪”の宿将であり、その筆頭である。
しかも、政務顧問官でもある『尚書令』を務める。)
―――――・・・。
リ:もう、あなたたちも知っているように、この国を通過して、ヴェルノアに南下した騎乗者の事なんだけれど・・・。
セ:誰か・・・分かったの?
イ:誰なの・・・・です?
リ:・・・現在(いま)より二年前、公主様と共に行方不明となり、
その半年後・・・なぜかしら、公主様と一緒に見つからなかった存在―――
諫議大夫・衛将軍・紫苑=ヴァーユ=コーデリア
セ:そ・・・そんな?!し、紫苑卿が??
イ:確証は・・・あるのですか?
リ:・・・100%までは・・・その時、私が実際に目にしたわけじゃないから・・・。
だから私・・・この目で確かめたいの、実際にこの眼で見てきて、あのお二人に何があったのか――――それを確かめたいの!!
セ:リ・・・リリア。
イ:(ふぅ・・・)随分と勝手な言い分ですね。
――――と、言っても、かの国の公主様にお熱を上げているあなたにとって、それはムリというもの・・・。
リ:・・・・ゴメンなさい。
でも私は、実際あの方に焦がれ、ここまで成り上がることが出来た・・・そのことは自覚しているつもり・・・。
だけど、あの時―――二年前のあの国で、一体ナニが行われていたか・・・それを知りたいの!!
イ:仕方・・・・ないわね。
それに、私も少なからずの興味もあることではありますし・・・・
分かりました―――それでは、あなたを『特使』として任命しましよう。
リ:有り難う―――イセリア。
〔セシルとイセリアは、このリリアという人物が、ヴェルノアの公主に傾倒していることなど、最初から知っていました・・・。
いえ―――この二人に限らず、この国の官吏である者ならば、誰しもが知っていた事実だったのです。
それであるがゆえに、三将の筆頭でもあるイセリアは、リリアにどんなに言って聞かせてもムダな事と認知し、
彼女を特使として派遣する事で、一応の折り合いをつかせたのです。
――――が、しかし・・・リリアが特使として、ハイレ・リヒカイト城をあとにした、その後・・・・〕
イ:・・・・セシル、至急、国境付近の砦に、二箇師団を配備して―――
セ:(えっ?!!)イ・・・イセリア?あなた―――今なんて?!
イ:・・・・もし、ここ半年で囁かれだしているあの噂―――“現在の公主は、『影武者』であるかもしれない”・・・。
これが真実ならば、私たちが、これを―――獲る!!
〔先程―――“雪”の宿将は、間違いなくこう言いました。
『私も少なからずの興味はある』・・・と、でもそれは、今回の騎乗者が紫苑某である―――と、いうことではなく、
この半年で、自国の一部の官達の間で囁かれだしている、ある“噂”――――『もしかすると、公主は“影”かもしれない』・・・
そのことだったのです。
そして、もしこの“噂”が本当だとするならば、この機を逃さず、ヴェルノアを攻め取る―――
この時機に、リリアを特使として派遣したのには、こういう意図が含まれていたのです。〕