≪三節;質疑応答≫
〔その一方で、『特使』としてアルル・ハイム城内に入ったリリアは・・・〕
リ:(ここ・・・数年ぶりになるけれど、さすがに相変わらずね。
以前のあの時は、公主様である“あの方”見たさに来訪していたけど・・・今回は違う―――)
ちゃんと大義名分で来てるのだからね・・・恥ずかしくないようにしないと――――
緒:――――お早うございます。
『特使』であるリリア様でございますね。
私は、この国の大鴻臚である、緒麗美耶(オリビア)と申します。
リ:ああ―――あなた様が、大鴻臚の緒麗美耶殿ですね。
私は、ハイレ・リヒカイトの太常・鎮西将軍のリリア=クレシェント=メリアドールと申します。
つきましては、真に不躾ではありますが―――公主様と、諫議大夫様にお目通りをお願いしたいのですが・・・・
緒:・・・・その件なのですが―――
リ:何か・・・ご都合でも?
緒:はぁ・・・実は、今、婀陀那様におかれては、ご多忙でありまして、片手間でよろしければ―――・・・と、いうことなのですが・・・
リ:あら・・・そう―――なのですか・・・と、いうことは、政務を見ていらっしゃる最中だったのですね。
分かりました、こちら側としても、今日の事を事前にアポイントメントを取っていなかったので、
そのことぐらいは覚悟できています。
――――と、いうことで、早速・・・・
緒:承知しました、こちらです―――・・・
〔まだ・・・物事の善悪の分別が付く前は、憧れであるあの人見たさに、多少は浮かれ気分だったものを・・・・
それが、今ではあれから少しは“成長したのだろうか?”と、思えるくらいに冷静に対応していたリリア・・・
事実―――これから真正面に向き合って対峙する相手は、以前からの時分の憧れの的であり―――
片手で何かしらの書を読みながらでも、内政務官達の言にも耳を傾けられる―――
そんな人物だったのです。
そして―――公主様自身のお部屋に通された、リリアの目にした光景とは・・・・〕
緒:失礼いたします―――特使リリア様をお連れいたしました。
公:む―――通して構わぬぞ・・・(カツッ―――☆)
緒:ハッ・・・あちらです、どうぞ―――
リ:は・・・・はい。
お初にお目にかかることが出来、恐悦至極に存じます、公主様。
公:うむ―――・・・(カッ―――・・・)
――――して、此度はなんのご用件・・・・ですかな、リリア殿。
リ:はい―――実は・・・・(かくかくしかじか)・・・なのですが、そこのところはどうなのかと思いまして・・・。
公:ふぅむ―――・・・(カッ―――☆)
なるほど、つまり・・・遠隔の地より、妾の密命にて馳せ戻ってきたのが、
数年前に奇しくも妾と同じうして亡くなった存在であり―――・・・(カツッ―――☆)
それがどうしてこの時期に・・・と、こういうわけか。
リ:はい――――・・・そういうことです。(じぃぃ・・・)
公:(スッ―――・・・ピタ)ふむ、そういうことなれば、直接本人に聞いてみなさるがよろしかろう。
これ、紫苑―――
紫:はっ―――・・・
リ:(紫苑卿・・・)それで、ナゼあのときに急いでいたのです―――?
紫:はい・・・実は、私は婀陀那様の命により、各地の治世や他の列強の統制がどのようであるか、
単独で巡察して参ったのです。
それが、時期的にもあの騒動と重なり・・・周囲に多大なる誤解を招いてしまったようですが―――
公:(カツンッ―――☆)はははは――――まあ、そういうな。
あれはあれで、妾が蟲共を燻(いぶ)り出すために、そなたの行動を利用させてもらったまでのコト・・・
それに、こういった謀り事は、密に進めねばならるのでなぁ―――
リ:そういうことでございましたか―――あれは、あなた方お二人の策であることも弁(わきま)えずに・・・
当方だけが早とちりをしてしまいまして・・・恥ずかしい限りでございます。
紫:いえ、どうやら誤解が解けましたようで・・・・栓無きことでございます。(ほっ・・・)
〔やはり・・・自分の憧れの人は違っていなかった―――
将棋盤に目を落とし、次々と駒を並べ替えながらも、自分からの質疑応答にはちゃんと答え、それが少しも的外れでなかったことに、
そのことにリリアは安心もし、また、少しでも憧れの人を疑ってしまった自分を恥じたものでした。