≪七節;公主“役”の思惑・・・≫
〔しかし―――読者諸兄たちには、まだお気づきになっていないだろうか・・・?
それは―――ルリの口からは、未だにその“胸中”・・・思惑を語られていない―――と、いうことを・・・。
そして、今―――最後の剣の交わりが・・・また、それとともに、はじかれてしまった剣と、その持ち主が――――!!〕
チュィイ――――ン☆
ザスン〜☆
リ:あぁ――――うっ・・・
紫:(ル、ルリ・・・あなたって―――)
公:・・・・いかが―――じゃな、リリア=クレシェント=メリアドール殿。
これでも・・・妾が手加減をせずにいられたとでも?
リ:か―――完敗です・・・。
もはや―――二の句も告げられません・・・。
公:そうか・・・。
(クル)ならば―――ついでにそなたに尋ぬう事がある・・・。
リ:(えっ・・・?)なにを―――ですか?
公:そなたの此度の来訪・・・確か、紫苑が急いて、そなたの国を駆け抜けたことである―――でしたな。
リ:え―――は、はい・・・。
公:その他に―――何かもう一つあるのではありませぬかな。
リ:(ギク)は・・・は?? な、なんの事なのです―――?
公:・・・・これは異な事を――――
妾の眼は、節穴ではないものぞ――――
リ:ど・・・・どういう事―――
公:知れたこと―――
ここ最近、某国・・・ましてや我が国にて、広まっておる“ある噂”の事よ・・・。
リ:あ・・・・“ある噂”??
公:いかにも・・・それは、この妾が『影武者』であるやも知れぬ―――と、言う・・・なぁ。
リ:そ―――そんな不埒な事を吹き込む連中が・・・
公:そなたも―――本音は、妾の“真贋”を見定めに来たクチであろうが・・・。
よいか――― 一つ言っておいてやるぞ、リリアよ・・・。
もし、今ここで・・・妾を“贋”であるとするなら、そなたのその剣で、妾の馘を持ち帰るがよい・・・。
じゃがな、この国には、その主を弑されて、黙っておるほど温厚ではないぞ・・・・
妾の馘を持ち帰ること―――それすなわち、会戦の意・・・と、心得るが良い。
そして、その軍(いくさ)によって、数多の民や将兵が費えていく事も、努々忘るるではない―――・・・
そのことを覚悟しておかれるなら・・・・(クル)
――――この妾の馘を持って帰るがよい!!
リ:――――――!!!
〔リリアは・・・このとき、時分の胸に秘めていた事を、一気に暴露された気がしました。
それも、他人ではなく――――憧憬(あこがれ)であった、あの方から・・・。
それゆえに、最後の、この公主様の啖呵には、半ば腰砕けとなり・・・その場にへたり込んでしまった、リリアが存在していたのでした。
そして、同時にこう思ったのです・・・
―――どうして、自分は軽率に走ってしまったのだろう―――
と・・・。
それもそのはず、自分や・・・況してや他人が、以前から抱いていた疑念・・・
『もしかすると、現在の公主様は、赤の他人かもしれない・・・。』
というのは、もはや彼女の内では、どうでもよくなってしまっており、
それより―――今、確かにどやしつけられたあの“声”こそは、公主・婀陀那の“それ”であり、“表情そのもの”だったのだから・・・。〕