≪二節;“兄”と“妹”≫
リ:あら―――?それより・・・セシルは?
イ:ああ―――“花”なら、留守居役として、ハイレ・リヒカイトに留まっているわ。
リ:(え・・・?)でも―――・・・私たちは、常に一緒に・・・
イ:(フ・・・)そうね―――確かに、それは“口実”よ・・・。
リ:すると、やはり―――?!
〔そう・・・そこには、常にスリー・マンセル(三人一組)で、行動をともにしていた、“花”の宿将の姿はありませんでした。
すると―――その理由を、“雪”の宿将から、『首都の防衛のために・・・』と、言われたのですが―――
実は、それも単なる“口実”に過ぎず、本当のところは、とある者の“説得”に回っている―――・・・
と、リリアもそう捉えていたのです。
では―――その“ある者”とは・・・
それはここ、ハイレ・リヒカイト郊外の、ティレルと呼ばれる地方の―――セシルの実家にて・・・〕
誰:それでは―――ちょっと出てくるよ・・・
セ:ああっ―――待って、カイン兄さん・・・私の話を聞いて―――・・・
カ:(カイン=ステラ=ティンジェル;25歳;男;セシルの『実兄』で、幼くして“神童”との呼び声があったものの、
この片田舎にくすぶっているのは・・・ナゼ??)
―――――・・・・。
―――バタン―――
セ:(兄・・・さん)
〔どうやら、丁度この時、自分の家を出ようとする男の姿が・・・しかも、その男を引き止めるかのような、セシルの声―――
でも、彼女は紛れもなく、その男の事を『兄』と、そう呼んだのです。
そう・・・その男の名こそ―――
カイン=ステラ=ティンジェル
かつて―――・・・この男こそは、その幼少より奇才・非才ぶりを発揮し、ここ苦の元老達をして『神童』の呼び声も高かった・・・
そして、それはやがて、この国を支える“柱”の一つになるだろう―――と、誰しもが思っていた・・・
が、しかし―――彼の考え方は、当時をして斬新そのものであり、考え方の古い者達からすれば、『異端』そのものだったのです。
そう―――とどのつまり、この国は、“彼”という<怪物>を飼いならせなかった・・・
その事に、カインは大いなる落胆をせざるを得なくなり、早――――この国を見限ろう・・・と、いう風潮さえ見え隠れしていたのです。
でも、新たに『尚書令』に就いたイセリアは、彼ほどの才の持ち主を、国外に放出してしまっては、
強いては自国の大いなる損失になる・・・と、し、同じく、三将の一人であり、彼の実妹でもあるセシルに、
カインの監視・・・及び説得役として当たらせていたのです。
そして、今――――魚を釣る道具を携えて、カインが向かった先は・・・アーケロン河の支流・・・ミノス川―――
―――と、言う事は、彼は日が日がな、釣りでもして、気を紛らわそうとしていたのでしょうか・・・〕