≪八節;別離(わか)れの間際に≫

 

 

〔そのごは―――滞りなく晩餐を済ませ、四方山話も終わらせた後、それぞれの寝床へ就いたのです。

 

そして、夜も明けて、客人を送別する段になり・・・〕

 

 

タ:久くながら、人心地つきました。

  また機会がありましたら、お会いしましょう。

 

カ:では、近くまで私が送ってやろう―――

  セシル、出仕の時間には遅れる事のないようにな。

 

セ:はいっ―――。(先生・・・お達者で・・・)

 

 

〔タケルは、彼らの家から暇(いとま)を乞い、カインがすぐそこまでを、お見送りするようです。

そして―――自宅からもややは慣れた場所で、こう・・・カインが切り出したのです。〕

 

 

カ:・・・ところで―――申し訳ありませんなぁ。

  アレの書いた偽信書の所為で、そこもとをこんなところにおびき出させてしまって・・・。

 

タ:はは―――いや、なに、こちらとて意味なくしてここに赴いたわけではない・・・。

  それに、気にはなっておりましたから・・・。

 

カ:“気にはなっていた”・・・とは、よもやそこもとまで、私の世間での風評を信じている・・・ので?

 

タ:・・・いえ。

  ワシの飼っておる『禽』の囀(さえづ)りで、そなたが人知れぬよう会っている“ある国”との関係でござるよ。

 

――――ザ・・・・

 

カ:フフ――――フフフ・・・・ハハハハ!

  そうか!いや知られてしまったか!! そこもとにはどうやらウソはつけぬようだ・・・。

  いかにも、私はここ数日にわたり、『黒き国』からの招きを受けている。

 

タ:そして・・・その使者は、かの国の大鴻臚・スミルノフ=ラッド=ヴィザール・・・

カ:ほう・・・知っていましたか、その名を―――・・・

 

タ:ええ・・・以前にも、ワシの処へきましたので・・・

カ:成る程・・・つまり、そこもとが『本命』で、私はその『次席』・・・いわば“滑り止め”というやつか、

  どうやら二人して、天秤に掛けられたようですなぁ。

 

タ:・・・ですが―――それであるにもかかわらず、そなたはそれを受ける気でいなさる・・・。

カ:・・・・どうする―――?腕ずくでも、私を止めてみせるかね・・・?

 

タ:・・・その眸に、一点の曇りがあったのなら、確かにそうしただろう――――が・・・

  今までのそなたを見るにつけ、それは杞憂であると感じた・・・。

 

カ:然様―――か・・・では、ここでお別れのようだなぁ、タケル殿。

  次にお互いが会う時は――――

 

タ:戦場で―――かもしれませんな・・・では。

 

 

〔そう―――タケルが、ハイネス・ブルグに赴いた“真の理由”・・・

それが、自分に似た境遇にある有能の士が、カ・ルマからの勧誘をしきりに受けている・・・しかも、どうやらそれを受ける気でいる―――

その事を知り、彼の本意を質すためだったのです。

 

しかし―――彼自身がそれを躊躇っているようだったなら・・・生半可な覚悟では命を落としかねないことになるため、

思いとどまるよう説得をするつもりだった―――けれども、彼は・・・

 

彼は、硬い信念を胸に抱き、誰も味方のいない地へ―――赴かんとしていたのです・・・。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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