≪七節;波風の立つ≫
〔実を言うと、その後日・・・・このカデンツァに、パロアからの使者が来たからなのです。〕
ヨ:ナニ―――?兄様からの・・・?
(ふむ・・・)よし、通せ―――
兵:はっ―――
誰:これはヨキ様・・・おなつかしゅう―――
ヨ:(ぅん?)なんだ、誰かと思ったら、お前か―――ガレス。
ガ:(ガレス;黒き軍団の軍酒祭謀、その三)
はい―――・・・取調べが難航しているのなら、後方のゴモラに移送するように・・・と。
ヨ:ちィ・・・・。
(後方に―――・・・か、しかし・・・それでは私の大王様への聞こえも悪くなってくる―――
それに、兄様ばかりにいい格好はさせてられない・・・・)
ガ:――――ヨキ様?いかがなされましたかな?(ニヤニヤ)
ヨ:・・・・いや、ナニ―――あともうひと押しというところなんだが・・・中々に強情な奴でな。
―――そうだ・・・ここは一つ互いに手を組み、二人してかの虜囚を吐かせてはみないか?
ガ:ホホぉ〜〜―――ヨキ様の責めにも屈せぬとは・・・(クフフ・・・)
ヨ:(ムッ―――・・・)一つ断っておくが、私の責めは緩(ぬる)くないぞ!!
ガ:(フフ・・・)いえいえ―――今のは決してそういうつもりで申したのでは・・・・
では――― 一つお目通り願いましょうかな・・・。
ヨ:(フン・・・)・・・・・こっちだ――――
〔その―――ガレスとか言っていた初老の使者は、遅々として進まない、虜囚:婀陀那への尋問に対し、
パロアにいる、ヨキの実兄ヨミより直接に使わされた者だったのです。
その事に対し、ヨキは余りいい顔は出来ませんでした・・・。
―――と、いうのも、多寡だか虜囚の一人のクチも割らせないでいる自分と、
その自分の手よりかの虜囚を取り上げ、自己の手柄としようとする兄を、なんとも歯がゆく思っていたのも、また事実だったのです。
そして―――易々と兄の手柄とするよりは・・・と、思ったヨキは、
兄からの使者、ガレスを巻き添えにし、婀陀那の尋問を再開させたのです。〕
ヨ:――――ここだ、あそこにいる、あの女がそうだ。
ガ:ほう・・・・どれ―――?
婀:(・・・・また・・・・来おったのか・・・・)
(ビクっ―――?)・・・・あ、あの・・・なんなのでしょう?(オドオド)
ガ:ホホ―――これは初々しい。
ヨ:・・・だが―――こいつの身に付けていたモノが、そこらの小豪族共が付けているモノよりかは豪奢であるがゆえに、
私はこいつが只者ではない―――と、見ているのだ。
ガ:ほう・・・ならば、そのモノを見せていただきましょうかな?
ヨ:ああ――――これだ・・・
婀:(・・・・まづいな―――)
〔部屋の扉が重々しく開かれ、そこからヨキとガレスの二人が入ってきた時、
婀陀那は、またも余所余所しい態度をとり始めたのです。
その反応を見るに―――“初々しい”と取ったガレスは、初老特有のいやらしい笑みを浮かべながら近付いてきたのですが・・・
それを遮るかのように、ヨキが婀陀那を只者ではないとする理由の一端を述べ、
ガレスもまた、婀陀那を吐かせる事が第一の目的であるために、自らの慾望を断念し、
ヨキの言った通り、婀陀那の着けていた武具と馬具の一式を鑑定し始めたのです。
すると――――〕
ガ:ふぅぅむ・・・ワシの見立てたところでは、これは“列強”の諸侯クラスの者が所有している類のモノと、
そう見て間違いはなかろう―――
ヨ:なんだと―――?!そうか! (クク・・・)やはり―――な・・・(ニヤァ〜)
―――さあ・・・どうだ!言えッ!! お前は、どこの“列強”に属するヤツなのだ!!
婀:え・・・そ、そんな―――“列強”??・・・・だなんて・・・
ああ―――!ううっ・・・い、痛い・・・あ、頭が・・・割れるように〜〜〜―――・・・
ヨ:(くう〜〜ッ・・・)またか―――!!
ガ:“また”・・・・とは??
ヨ:いや―――なに・・・
こいつは、このように少し突っ込んだ事を聞いたりすると、頭痛がして後々の取調べに支障をきたす事があるんだ・・・。
ガ:ふぅ〜〜ム・・・これでは取り付く島もございませんなぁ・・・
ヨ:(ちいぃ・・・)おいっ―――!キサマ!!いい加減にとぼけた芝居は止めんか!!
婀:そ・・・そんな―――分かりませんっ!わたくしが何者であるのか・・・
むしろ、わたくしのほうが知りたいくらいですっ―――! 教えて下さい・・・わたくしが誰であるのか――――