≪二節;州公からの提案≫
〔あれから――― 一日と数刻余り・・・都城・ウエオブリに一頭の早馬が―――
その乗り手とは、間違いなくアヱカの命を受けたキリエなのでした・・・。〕
キ;開門―――開門―――ッ!!
私は、ガク州よりの使者にございます―――!
〔ガク州より信書を携えた使者を送り出してすぐに、キリエ自身早馬にまたがり、
それこそ昼夜を問わず、一路ウエオブリを目指していたのです。
そして、ウエオブリに着くや否や、以前から懇意にしてもらっているこの人物の下へ・・・〕
キ:お久し振りにございます―――セキ様。
セ:おお・・・どなたかと思えば―――ガク州はアヱカ様のところのキリエ殿では・・・
キ:はい―――
録尚書事として政務を鑑ているセキ様には、お忙しい折わざわざ手を空けて下されて恐悦に存じます。
セ:ははは、いや―――そんなことよりどうしたのだね?
キ:はいっ、実は―――
〔彼が侍中であった当時、ある事をきっかけにして現在の地位・・・政務を鑑る官としては最高峰の『録尚書事』に就いた・・・。
しかも、その助言をした者こそ、実はアヱカだったのです。
以前よりフ国にはびこっている佞臣の一派を抑えるため・・・ショウ王の施した苦肉の策、『連環の計』により、
自身を官位で買われたフリをして、今日(こんにち)の彼があるのです。
ですが・・・キリエは、何も録尚書事たるセキに用があったわけではなく・・・
では―――その実、真に用があったのは・・・〕
セ:ほう―――なるほど・・・司徒であるイクに・・・
キ:はい―――その上で、あなた様にも今回の提案に加わっていただきたい・・・そう、州公様自ら・・・
セ:(ふぅむ・・・)分かりました―――。
それでは早速、イクの下へと案内いたしましょう。
〔当時をして、政治を鑑る政務官の・・・その頂点といっても差し支えのない録尚書事・・・
そのセキをしても、司徒への渉り役として考えていた州公のアヱカ・・・
本来ならば、彼女のしていた事は、傍目から見ると非常に大それた事のように思えるのですが、
セキとしても、これまでのアヱカの只ならぬ所作為に一目置いていただけに、その要求はすんなりと通ったのです。
そして―――司徒・イクの前に集う、録尚書事とガク州公の使い・・・〕
イ:ほぉう―――近々、州公同士で一席を設けたい・・・と。
キ:はい―――
我が主に於かれましては、フ国にとってもこれからが正念場・・・ここは一つ、各州が手を取り合ってお国の為に成そう―――
と、申しておりまして・・・。
イ:ふむ―――そこでワシ自らが筆をとり、“ジン”“ギ”“レイ”“チ”“シン”の各州公に、
ここ・・・ウエオブリに集まってくるように・・・・と?!
キ:その通りでございます。
セ:中々―――いい提案のように思われますが・・・?
イ:(ふむ――――・・・・・・・・フフフ・・・・)
いや・・・・そういうことなら、惜しみなく骨を折ろう。
しかし―――今更ながらに思うと、かの地に追いやってしまった事に、少なからずの残悔の念に絶えぬ・・・。
セ:真に―――・・・アヱカ様の考えようは、この老いぼれの常に上を往くものです・・・。
〔それこそは―――王都・ウエオブリに六つの州の施政者が一堂に会する・・・と、言う、
当時としても、最も画期的な申し出でもあったのです。
そして、その集会の主な趣旨として、かの国・・・カ・ルマの侵略が進みつつある中、この六つの州が連繋を取り合い、
フ国を護っていこう―――・・・と、いうことだったのです。〕