≪六節;州公遭難≫
〔そうこうしているうちに、時間は経ち―――やがてガク州城へと帰らねばならなくなる、
州公としてのアヱカは・・・・〕
ア:思わず―――長居をしてしまいました。
もう・・・ここに来る事もないでしょうが、そなたの兄上殿にも、宜しく言い置かれて下さい。
チ:いえいえ―――この度の件は、手前が謀(たばか)った事。
この程度で兄との『縁(えにし)』がなくなったと思わないで下さい。
その目で―――実際に兄を見られて、その上で判断をされて頂きたい・・・
ア:そうですか―――それでは、今はこれにて暇(いとま)を申し上げる・・・(ペコリ)
チ:それでは――――(ペコリ)
〔一度は、縁の巡り合わせのなさにあきらめかけていた事も、件の人物の親族の者より励ましの言葉を貰い、
その願いを再燃させるアヱカ。
これは、その帰途への馬車の車中―――――〕
ア:なんと・・・清々しい人物なのだろう―――
弟であのようなのだから、その兄としてはまだ潔いのかもしれない・・・。
下手をすると、振られてしまうかも・・・な。
キ:しかし―――聞けば、その“典厩”なる人物、『清廉の騎士』といわれるでは・・・
ア:ああ―――アレか・・・
アレも、姉さんの作ったシステムなんだよ。
たまたま私の傍にいたのが姉さんで、<マエストロ>という、騎士としての最上級の称号を得ていたからね・・・・。
ア:<えっ・・・?と、いうことは、マエストロ・デルフィーネ様・・・って―――>
女:(フフ・・・)そうそう―――それに、姉さんの髪は、清らかな“蒼”だったからね―――それが転じて『清廉の騎士』。
まあ・・・今では、その名が一人歩きしているようなものだけどね。
キ:でも―――その実力は折り紙つきなんですけどね・・・
ア:<それは―――どういう事なのです?>
女:ああ・・・それはね―――
実は、その称号を継ぐには、“あるモノ”を引き継がなければいけないんだ―――
ア:<“あるモノ”・・・??>
女:・・・光の聖剣、『緋刀・貮蓮』
ア:<ええっ?!緋刀・・・貮蓮!? ―――と、いうことは・・・>
キ:(それにしても妙な・・・私たちが帰る頃には、あの二人の姿が見えなくなっていたとは――――)
すると―――その時―――・・・
ピュィイイ――――――――――――――――ッ!
ア:な―――なんだ・・・今の音は!!
キ:(何かの合――)――図!!?
ド サ ン ☆
ア:ナニっ―――?!
キ:(馬車の・・・)上―――!!
〔帰りの馬車の中では、チカラなる者を好評し、少しばかり過去の事を振り返った女禍様とキリエがいたのです。
しかし―――このときキリエは、少し妙な事に気付き始めたのです。
それは・・・今回庵に来たときに、愛想のよい笑顔で迎え入れてくれたレイカ・・・・と、
やはり自分たちと一緒にガク州城から馬車でこの庵に戻ってきたユミエ・・・そのどちらもが、
自分たち二人が、ガク州への帰路についた途端―――姿が見えなくなっていたのです。
その事に、つい不安を過ぎらせるキリエ―――・・・
そう思っていた矢先に、馬車も州境近くの林の中に差し掛かった途端―――
なんとも空を切り裂くような甲高い笛のような音・・・と、それにまるで合わせるかのように、
今、二人が乗り合いの馬車の屋根の上に、“ナニ”か重いものが落ちてきたのです。
その事を、“襲撃”と認識し、素早く馬車から飛び降りたキリエ・・・そこで彼女の見たモノとは―――〕
キ:うぬれ―――何ヤツ! カ・ルマの手の者か!!
鵺:――――フッ・・・
〔その者・・・自分が何者であるか、分かり難(にく)くなるよう、頭と顔半分に布を巻いたり―――
しかして、その身を纏うモノも、動き易さを第一に考えられた軽装なモノであり、
なおかつ、色は樹々に溶け込むかのような 濃緑 をなしたり・・・
そして―――・・・その両の腕(かいな)に持ちたるは・・・・
=一 角 雷 針=
そう・・・その襲撃者なる者こそ、=鵺=だったのです―――〕