≪二節;古き知己≫
〔それとは―――また別のお話しで・・・
読者諸兄におかれては、ご記憶の中にあるでしょうか―――・・・
そう・・・かの『お方様』と同じ名を持つ、一人の少女の事を・・・
少女―――ヱリヤは、その身を自分の棲み処である、あの場所にはおかず、
現在は、列強の一つ・・・サ・ライの主とシャルナにおいていたのです。
ですが―――ふとした彼女の思いつきから、サ・ライとヴェルノアの国境近くの町『クレドナ』に、
自分の古き知り合いを訪ねて来ていたのです。〕
ヱ:(あやつは―――元気にしているだろうかな・・・)
おや?あそこに人が・・・・
あの―――すみません、この辺りにヴェスティアリというお宅があると思うのですけれど・・・
ご存知ありません?
誰:はい―――? ああ・・・ヴェスティアリは私ですが・・・
ヱ:あなた様が―――? いえ・・・そうではなくて―――
もう少しお年を召した方なんですけれど・・・
誰:・・・・ああ――――母の事ですか・・・
ヱ:(母?)・・・・と、いいますと――――
ゼ:(ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリ;20歳;女;どうやら少女・ヱリヤは、“ヴェスティアリ”なる者を訪ねに来たらしい・・・
けれども、この女性ゼシカも、ヴェスティアリの名を冠するようです。)
はい―――私は、ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリと言う者です。
それにしても―――母の知り合いに、あなたのようなお嬢さんがいた・・・なんて、意外です。
ヱ:(んっ?? やはり・・・この姿では不適当だったかなァ・・・)
えっと―――・・・ですね、実は私もオバア様から、あなた様のお母様のこと・・・よく聞かされておりまして―――
それで、この度近くまで来ましたから、ちょっと寄ってみようと思いましたの。
ゼ:・・・・そのこと―――なんですが・・・
ヱ:あの・・・どうかなさいました?
ゼ:ここで話すのはなんですから、家の方でお話いたしましょう。
〔今―――少女・ヱリヤが、自分の古き知り合いと同じ名を持つ一人の女性と、会話をしました・・・
その女性の名は―――ゼシカ。
では、少女・ヱリヤはこの女性を訪ねて・・・?
いえ―――そうではなく、彼女が今回訪ねようとしていたのは、少女である自分の古き知己・・・・
そして、このゼシカなる女性の“母親”に―――だったのです。
しかし―――自分の実母の事を耳にしたゼシカは、なぜか急に口が重たくなってしまったのです。
なぜなのでしょう―――・・・
それはそうと、ゼシカの自邸に上がらせてもらった少女・ヱリヤは、お呼ばれに上がっていたようです。〕
ゼ:――――お飲み物はお茶でよろしいでしょうか?
ヱ:はい―――。
あの・・・それで、できれば“お熱い”のではなくて、“少しぬるめ”のを頂きたいのですけれど。
何しろ―――生来から、熱いのは苦手でして・・・
ゼ:はい―――かしこまりました・・・。(ニコ)
それでは、ミルクにお砂糖のほうはいかが致しましょう?
ヱ:うぅ〜〜ん・・・ミルクは入れてかまいませんけれど、お砂糖のほうは控えさせていただきます。
ゼ:あら、そうですか―――では、すぐお持ちしますので、少々お待ちになってください。
ヱ:はい―――。(ニコ)
(・・・に、しても妙だな―――この家からは、あの娘の気しか感じられないが・・・
まぁ―――あやつも、優秀な魔法術具を創る担い手だったからな・・・おそらく、どこぞの国でクヴェルでも直しているのだろう・・・)
〔自分の、古えよりの知己――――また、その娘・・・に、会い、彼女の案内を経てヴェスティアリ邸へと来ている少女・ヱリヤ。
そしてそこでは、自分の母を訪ねてくれた“少女”に、精一杯のおもてなしをする、もう一人の『ヴェスティアリ』の名を冠する女性。
それの意味するところとは―――・・・?
そこで、少女・ヱリヤは少し妙な事に気付くのです。
そう―――・・・この家には、自分の知己の“娘”の“気配しかしない”・・・と、いう事を。
ですが―――少女・ヱリヤは、こうも思っていたのです・・・
自分の知己は、自分と違い・・・実に優秀だったから、多忙を極め―――どこか余所の国へ行っているのだ・・・と―――・・・。〕