≪二節;独り言・・・・≫

 

 

〔そして―――ガク州公・アヱカから出された重要案件を聞き、

ジン州公であるカはこう返したのです。〕

 

 

カ:しかし―――地理的・戦略的に見ても、カ・ルマからしてみれば、ガク州は重要な地―――

  それに、小手先だと思われていた件の事も、『味方が全滅されられる』と、言う大失態を演じてしまった。

 

  つまり―――このことは、ガク州が陥ちるまで続けられる事の示唆でもある―――・・・

  そうに間違いはないですね、アヱカ殿。

 

ア:はい―――・・・

  それに、近々あるとしても、前回の兵力の倍で・・・と、いうことは、容易に想像するのに難くないこと―――

  それに、もし・・・今回も撃退に成功してしまえば、その次にはそのまた倍・・・

 

  ですから、現時点での兵力で、防ぎきれるのだとしたなら、次が精一杯だと・・・

 

カ:・・・分かりました―――

  こちらとしても、ガク州が陥ちれば、次には私のところか・・・真南のギ州、

  それに―――王都も危うくなってしまう。

 

  この上は、是が非とも、ガク州公には踏ん張っていただかないと・・・

 

ア:ありがたいお言葉で―――・・・

 

カ:いえいえ―――それに、こちらとしても、ガク州に防波堤の役割をさせてしまっているようで、気には引けているのですよ。

  ですから、この事は特にお気になさらずに・・・

 

ア:はい―――重ね重ね、ご恩に着ます・・・

 

カ:ああ、あとそれから―――

  ギ州のコウ殿には、私のほうから書簡をして、今回の受諾を試みますので―――

  なぁに、あの方は、あのようなお顔なれど、一度信頼した者には背かない“義”のお人だ・・・

  心配には及びませんよ。

 

ア:はい・・・真に・・・忝(かたじけな)い・・・。

 

カ:それでは―――これをもって一応の区切りと致しましょう、お二方も大変ご苦労様でした。

 

  ああ―――それから、アヱカ様には、お部屋を一つご用意させてございますので、

  そこでお休みになられて下さい・・・。

 

ア:(コク)――――有り難うございます・・・。

 

 

〔そこでは、宜しく国境防衛の事が話し合われ、各州相互の下で、ガク州を援護していく事が取り決められたのです。

 

そのことに、アヱカは慙愧の念に堪えませんでした・・・

やもすれば、今回の政策の失敗を、他人に償わせかねない事だったのに・・・

 

それをこの二人は、何の“有償”を省みるでもなく、『協力する』と言ってくれたのです。

 

そして―――『これでガク州の民と官の安全は確約された』と、感じたアヱカは、

その嬉しさの余り、胸を詰まらせながら・・・部屋を退出していったのです。

 

 

すると―――その後の、その部屋で・・・〕

 

 

カ:・・・ソン殿―――彼女を見て、どう思われます・・・。

 

ソ:・・・はい、正直申し上げて、立派な方だと思います。

 

  自分の事しか考えもしない、この時代のこの風潮の中で、他の処の事をまづ第一に考えられるなんて―――・・・

 

カ:(ふぅむ―――)・・・ソン殿、これから私が言い置く事は、ただの“独り言”・・・。

  ゆえに、耳障りであれば耳を塞いでおいてください。

 

ソ:(え・・・?)ハミルトン殿―――?

 

 

カ:私が思うに―――ああいったお方こそは、“州”という小さな器に収まっておくべき存在ではないと思うのです。

 

  彼女の・・・あの大器を遺憾なく発揮出来うる処―――それは『列強』という“器”ですらありえない・・・

  まぁ―――いうなれば、この<ガルバディア大陸>全土をして・・・と、いったところでしょうか―――

 

ソ:ハ―――ハミルトン殿・・・今、あなたは・・・一体―――

 

カ:そう・・・ですが、今のこの私の言は、今までフに恩義を受けてきた者の言葉ではありません・・・。

  いわば、民衆の言・・・。

 

  ソン殿、あなたも少なからず感じているはずです、この・・・列強一の大国として讃えられているフですら、

  揺らぎ―――傾こうとしている事を・・・

 

ソ:――――・・・。

 

カ:・・・ある例え話には、沈みそうになる舟には、レミングラットがいつかなくなるそうです―――

  それは、レミングラット如きの小さな生き物でさえ、己れの生命の危険性を察知できる・・・と、いったことなのですが、

  それがどうして、我等人間に出来ないことでありましょう―――・・・。

 

ソ:――――ハミルトン殿・・・。

 

カ:―――以上が・・・私の“独り言”です。

 

  まぁ・・・そんなに深く考え込む事はないでしょう。

  いづれ―――その時が来れば・・・の話ですから。

 

 

〔しかし―――ソンには、それが“忘恩の徒”のように聞こえてならなかったのです。

 

しかも、カはそれまでに『忠孝の士夫』としても知られており、

政治的な手腕は、かの司徒・イクにも匹敵しているという・・・・

その彼からの発言を受け、ソンは戸惑ってしまったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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