<三節;ある者の“噂”>

 

 

〔閑話休題―――

某日未明・・・ガク州の―――いや、フの前哨基地でもある<グランデル砦>より、北西二里余りの地点に、噴煙上がるのがありき・・・

そして同時に、その場に翻っている軍旗こそは―――・・・〕

 

 

伝:伝令―――!

  またもや、グランデル近くに、カ・ルマ軍が陣営を結んでいる模様―――!!

 

ヒ:なぁにぃ―――?!

キ:・・・して、その数は―――

 

伝:はい―――兵の数、前回の約2.1倍、一万と五百にございます!

 

ヒ:ぁあ゛?!あんだと―――

  お前ぇ〜・・・そりゃ、ちとサバ読みすぎてるんじゃ―――

  それに、あんなちっぽけな砦に、なんだってそんなに―――・・・

 

キ:・・・でも、かの地はあいつ等にとっても、その前哨戦で出鼻を挫かれた・・・いわば縁起の悪い地。

  それを払拭させるためにとられた措置としては、妥当な数ね・・・。

 

ヒ:はんっ―――! だぁッたら、また ガツン! と言わしちまえばいいことじゃあねえかよ!

 

キ:(はぁ〜・・・)まあ・・・・あの時は、私たちが仕掛けておいた苦肉の策―――『空城の計』に、はまってくれたからいいようなものの・・・

  今回もまた、同じ計略を使ったとしても、かからないでしょうね―――・・・

 

ヒ:あん時―――? ああ〜確かあんたが、怖さのあまりちびってたアレかぁ―――・・・

キ:(赤面!)こ、虎鬚殿っ―――!!

 

ヒ:オッと―――わりぃわりぃ(ヘヘへ・・・)

キ:(まったくもぉ〜・・・今回出撃すんの―――やめようかしら・・・)

 

ヒ:―――けどよう、ンにしても・・・化け物が化け物を襲った〜って事に、オレは驚かされたけどもなぁ・・・

キ:・・・・はぁ? “化け物が化け物を”・・・って、なによそれ―――

 

ヒ:イヤさなぁ〜? あんたが―――随分と後方のほうでガタガタ云ってたときに・・・

  蒼い―――龍の騎士・・・っていっていいのかなぁ〜・・・

  そいつがな、周囲(まわ)りにいた敵兵全部を弑(ヤ)ッちまったのよ。

 

  なんだったんかなぁ―――ありゃあ・・・

 

キ:あら―――でも、事後の報告にはそんなこと、一つもなかったじゃない・・・

ヒ:いや―――な?? ほら・・・ンな事言ったってさぁ、信用する奴なんざいやしねぇぜ?!

 

キ:(フフッ―――)それも・・・そうかもね―――

 

ヒ:ああ・・・そういやぁ―――あの“龍の騎士”、去り際になんて言ったっけかなぁ・・・

  確か―――だすべ・・・なんとか〜〜って・・・・

 

キ:――――ダスビドゥーニャ・タワーリシチ・・・。

  確かに、“別離(わか)れ”の言葉ね。

 

ヒ:あ゛?! な、なんだって―――あんたがその言葉・・・

キ:(ニコ)それよりも―――カ・ルマを撃退する方法・・・練りましょう!

 

 

〔またもやカ・ルマの襲来―――しかも、今回は前回の二の轍を踏まぬよう、2.1倍の兵力をして、攻め寄せてきたのです。

しかし、それを―――『だったらまた、出鼻を挫いてやればいい』と、するヒと・・・

現在ガク州が有する兵力では、限界を感じていたキリエがいたのです。

 

そして、このとき―――ふとヒが漏らした、前回の撤退戦の詳細を、キリエが聞くこととなり、

でも、それは、撤退戦の模様を事細かに記したはずの、報告書の中には、ただの一つも入っていなかったのです。

 

それを問い質したキリエに、ヒは、夢・・・絵空事のようなことを話したとしても、誰も信用するはずもない―――と、したのですが・・・

もう一つ気になっていた、例の騎士の、去り際のあの言葉・・・

 

―――ダスビドゥーニャ・タワーリシチ―――

さ   ら   ば   同   志   よ

 

その事をぼやいていた時に、その場にはいなかった者の口から語られた、その言葉の正確な意味―――

そして・・・彼女の顔を見たとき、なぜかあの時の―――蒼龍の騎士のヘルメットから覗いて見えた・・・

あの口元によく似ている―――ような気がしていたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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