≪八節;その存在―――“不機嫌”に、つき・・・≫
ダ:(うぅッ・・・)く、くそぅぅ〜〜―――退け!ここは一旦退くんだ!!
〔兵力差は、相手方の約五倍・・・でも、その数も、案外“陽動”には弱いものでした・・・
それに、『寡兵』だから―――と、いうことのみで、勝ちを拾う自身があった・・・
しかし、今は、周囲(まわ)りの三方が敵―――それゆえに、大半が混乱をきたしてしまい、
どちらが敵か見方か、分からない状態に陥ってしまったのです。
だから、遮二無二退こうとした―――・・・ただ、相手より数が多い・・・それだけが強味だった―――
でも、その強味を、迷うことなく撤退に使おうとしていたのです。
ですが―――・・・そこには、もう一騎・・・
いや―――“人間”ではない、とある獰猛な生物が・・・
彼らの引く道を阻んでいたのです・・・。〕
ダ:(くっそぉぅ〜〜・・・ここはひとまづ退いて―――それから体勢を立て直さねぇと・・・)
ん?? どうした―――こちらに戻ってくるんじゃあない、さっさと陣に――――・・・
兵:そっ・・・それがぁぁ〜〜―――
兵:バ、化け物が、我等の陣地までの道をぉ〜〜―――
兵:ふ、塞いじちまってるんでさぁ―――!!
ダ:(ナニ?!)化け物??
一体―――ナニが・・・?
〔このとき―――ダンダークは、自分の耳を疑いました・・・
なぜならば、化け物・魔物の類は、自分たちの・・・カ・ルマの味方のはずなのだから―――
それを、どうして自分たちの兵士たちが、こんなにも怯えて―――??
そう・・・思っていたところへ、希(のぞ)みもしない存在が、向こうのほうから、近付いてきたのです―――〕
グ・ゴルルル・・・・
兵:う・・・うわぁぁ〜〜〜――――
兵:き、きたぁぁ〜〜〜――――!!
兵:逃げろぉ〜〜―――!!
ダ:ああっ―――コラ、待て!!
(ぅっ・・・く―――)な、なんだ・・・ありゃあ――――
ヒ:(あっ!あれは――――・・・)
〔その―――・・・希(のぞ)みもしない存在こそ・・・龍・・・
しかも―――見慣れない蒼穹の甲冑を、その身に纏った、古(いにし)えの騎士―――・・・〕
敵:あ゛っ、あ゛あ゛〜〜―――・・・た、助けて?!!
敵:お・・・お願い゛じま゛ずぅ゛〜〜――――
敵:い―――命ばかりはぁぁ〜〜〜・・・・
ズ シン―――・・・ ズ シン――――・・・
敵:う゛ギャっ?!
敵:ブギャっ!!
敵:へに゛ょえ゛っ?!!
〔その存在は―――・・・人語を解しえないのか・・・武器を投げ打ち、必死に命乞いをしているカ・ルマ兵を―――
まるで、ガネーシャがマィティー・アンツを踏み潰すか如く、その巨大な脚の下に轢いていったのです。
――――と・・・そうかと思えば。〕
龍:<また・・・騒々しくなったから―――と、思って来たらば・・・
また、うぬらか―――、よくよく我を怒らせたいらしいな・・・・>
ダ:ひ―――人の言葉?? だ・・・だったら、ナゼ―――足下の・・・
龍:<―――ぅん? 何だ、いたのか・・・この、虫けら風情が。
いい加減、うぬらのような、ウス汚れた存在を見ていると、胸ヤケがしてくる・・・。>
ズ―――ズズズ・・・・
ダ:う・・・・ぉおっ?!! な―――なんだ・・・あの、バカ巨(でか)い得物は・・・
ヒ:フ・・・フローズン・ハープーン・・・・
ダ:な―――なんだと・・・・おっ?!!
龍:<散ぃれぇぇ〜〜―――い!!>
〔このときダンダークは、またも自分の耳と目を疑いました。
なぜなら、紛れもなく、その怪異なる騎士の口からは、人語が話され―――・・・
そう、つまり、それならばどうして命乞いをしていた者達を、簡単に踏み躙れたのか―――なのですが・・・
どうもその騎士は、その時相当に虫の居所が悪かったらしく、やにわに―――自分の武器である“氷の画戟”を創り出すと、
自分の感情あるがままにか―――眼前に群がり来る存在に、襲い掛かりだしたのです。
しかも―――またも、カ・ルマの兵だけに・・・〕