≪九章;“命”の代価≫

 

 

〔その騎士の武器―――『ヴェンティシュカ』のひと薙ぎで・・・数百人―――――

その龍の巨大な脚の下敷きになった者・・・・・数十人――――

そして、それらに匹敵する被害に、クロコゲイルやナブラリザードなどの大型爬虫類に見られる、長大な尾・・・

それが左右に振り払われるだけで、犠牲になった者の数・・・数知れず―――

 

しかも、それは、ダンダークも例には漏れなかったのです。〕

 

 

ダ:(ぐ・・・むむぅ〜〜―――、どうなってるんだこれは・・・魔物の類はオレラを襲わないんじゃあないのか??

  いや、それより―――今、こいつがこうしてオレらを襲っているということは、フにもこういうのを手懐(てなず)けているのがいるというのか??)

 

 

〔彼―――ダンダークの脳裏に過ぎったこと・・・それは、自分たちの勢力の元にいる、程度以上の存在が、

これから攻略しようとしているところに、すでにいついてしまっている―――と、言う事だったのです。

 

―――と、ダンダークが、感想を終わらせないでいる、まさにその時、

彼は、蒼龍の騎士の冷たき手で、頬のところから鷲掴みにされ、剰(あまつさ)え高々と掲げられていたのです。〕

 

 

ダ:う゛・・・・! ぐをぉぉ・・・・

 

龍:<フン―――・・・見ぬ顔だな・・・。

  このまま縊(くび)り殺してやろうか?!>

 

―――ググ・・・グググ―――

 

ダ:ふ―――・・・ぐうぅぅ・・・・(フル・・・フルフル)

 

龍:<フッ――――フフフ・・・もしかすると命乞いか?

  まぁ―――どうしても・・・と、いうなら、見逃してやってもかまわないが―――>

 

ヒ:(なぁにぃ?! 見逃す??)

 

龍:<そうよなぁ――――・・・(チラ)

  ・・・あそこに残っている、うぬの配下―――と、いうのはどうだぁ?!>

 

ダ:うぅ・・・ふぐぅぅ〜〜―――・・・(コクコク)

 

龍:<フ・・・ハァ〜〜―――ッハッハッハ!!

  そうか・・・うぬ一人の命と、残兵三千余の命と・・・天秤(はか)りにかけたのか!!

 

  “新顔”にもかかわらず、そういう腐ったところは相変わらずと云ったところのようだな―――!!

 

  まあ・・・いいだろう―――どこぞとなりとも失せろ!!>

 

ダ:ひ・・・ひぃぃ〜〜――――

 

=逃走=

 

 

〔そこにいた、カ・ルマの兵も、ガク州の兵も・・・ただ、呆ッ気に取られるしかありませんでした。

 

なぜならば、そのダンダークという者は、自己の生命の危うさを知るや否や、将としての責務を全うせず、

己の生命の代価として、生き残った自軍の兵士三千余名を、この蒼龍の騎士に売り渡してしまったのですから・・・。

 

そして、その騎士の手から放り出され、無様な格好で自陣へと逃げていくダンダーク・・・

 

しかし、そこには憐みにも似た同情の視線・・・いえ、それすらも通りしてしまった、実に冷ややかなものが、数多く存在していたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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