≪五節;“虎”将を慾っす―――≫
〔それよりも―――果たして、カインの策略が面白いように意中にはまり、
まさにそうなってしまった両軍がそこにはあったのです。
でも・・・たった一つ困った事といえば―――〕
カ:ふうむ―――・・・ここまでは順調でよかったが、
あそこへ立て篭もっている者が、よもや本当に“虎”だった・・・とは、なぁ。
長:カイン殿ぉ―――・・・感心している場合ではございませんぞ?!
長:そう―――その通り、昨日に引き続き、今日もまた、中隊の一つがあの者の手によって・・・
カ:(ふぅ・・・む―――)こいつは―――予測を下方修正しなくてはならんなぁ・・・。
長:はぁ?!一体何の事を言っているので・・・??
カ:うん? いや、なに―――・・・当初のこの作戦では、『双方とも一兵たりとも損なうことなく』・・・だったのに、
ビャクテイに立て篭もっているあの者のおかげで、こちらは三ケ中隊ばかり損失している。
果てさて・・・・どうしたものやら―――(ポリポリ)
長:“どうしたものやら”――――って、それを今更あんたが言ってどうすんの??!
長:しかし―――・・・こうなっては、多少の損失が出ても、全兵力をして、
あの砦を取り囲んでみては・・・?
長:うぅ〜〜―――ん・・・余り賢い方法とは思えんが、そうするしかないかなぁ・・・。
〔そう―――攻め手である、カ・ルマ軍が頭を痛めていた事はただ一つ・・・。
クー・ナ側の三拠点並びに三大兵糧庫の一つまでも手中に収めた―――
までは良かったものの、元々クー・ナの拠点の一つであり、一時的にカ・ルマに奪われた『ビャクテイ』を取り戻され、
そこにギャラハットを初め・・・『サヌキ』と『ホウキ』の守将でもあった、ミルディンとギルダス・・・
そして、自分の養女でもあり副将でもあるヒヅメを加えて、少なからずの抵抗を試みていたのです。
それに―――ここに来てカインが眼を見張ったのは、ギャラハットのその采配・・・
抵抗をするにしても、無闇矢鱈(むやみやたら)と兵を動かせず、砦に十分にひきつけて迎撃に当たっているのを見て、
カインも、その心の内で、“この者は使える―――”と、思っていたようです。〕
カ:確か―――に、こちらもこれ以上の無駄な兵力を動かせて、ヘタに兵を損なうというのは得策ではない・・・。
だが、いたづらに時を長引かせて、クー・ナ本国より増援が来てしまうのも、また望まないこと・・・。
―――と、いうことで、今度はこの策でいこう。
〔そこで―――ここでまた明らかにされた、カインの策・・・とは、
ですが、その策を聞いた各兵長たちは、皆こぞって目を丸くしてしまったのです。
なぜならば―――・・・〕
長:はぁあ??! ちょ―――ちょっ・・・と、これ・・・
長:あの砦を―――取り囲むので?!
長:でも・・・それじゃあ、オレ達と考えている事と同じレベルなんじゃあ―――
〔そう・・・それこそは、“見た目通り”ならば、各兵長たちの言っていた
『全兵力をつぎ込んで、その砦を包囲する』こと以外のなにものでもなく、
いわば力技そのものであり―――・・・
ですが、たった一つ異なる点をこれからカインが述べることにより、
全員が得心してしまったのです。〕
長:えぇっ―――?!い、今・・・なんと??
カ:つまり―――だね・・・
私らのところは、三大兵糧庫の一つを抑えている―――と、いうことで、
兵士たちの腹を飢えさせる事はない・・・と、いうことさ。
長:なるほど―――・・・そのためにあの砦内に備蓄している兵糧が尽きるまで、
ビャクテイを包囲しおく・・・と、いうことですか。
長:でも、しかし―――こちらがそうすれば、向こうのほうも必死に抵抗をしてくるのでは・・・?
カ:(フ・・・)そう―――ならないためにも、十日おきに一方の兵を、別の処に置き換える・・・。
〔その―――“たった一つ違う点”というのは、ビャクテイの兵糧が尽きるまで・・・を、細かく計算し、
徐々にある一方―――・・・南側の兵を、別の場所に移動させる・・・と、いうことだったのです。〕