≪六節;“虎”将を得る―――≫

 

 

〔しかし―――それは、一方のクー・ナ側から見れば、南側だけが手薄になる・・・

と、見えてしまうわけであり―――

 

すると・・・〕

 

 

ギ’:(ギルダス=ヴィンゲーツ=サッチャー;28歳;男;クー・ナ在籍の雄将の一人。

  情に厚く、ここ一番で頼りになるタフガイ。)

  おお―――ギャラハット殿・・・見なされ、十日ほど前まではマイティ・アンツの入る余地さえなかったところが・・・

 

ミ:(ミルディン=ペィター=チャーチル;27歳;男;上記のギルダスと同じく、クー・ナ在籍の雄将。

  ともかく―――物静かというには余りにも無口すぎる優男。ギルダスとは対照的。)

  しかし―――南側“だけ”・・・とは、またなんともあからさまな―――

 

ギ:フム―――・・・確かに・・・。

  だが、ここに備蓄している兵糧も残り少ない、罠と分かっていても抜けていくべきだろうな・・・。

 

  ―――その大役、不肖のワシがなそう。

 

ヒ:(え・・・?)お―――お養父(とう)さん??

 

ギ:(フ・・・ッ)ヒヅメよ―――ワシは皆が思っているほど賢明ではない・・・。

  ここが無人の砦になったからとて、素早く隊を四つに分け―――

  その各個をして三つの砦と兵糧庫を奪うとは・・・

  粗野なだけがカ・ルマの軍―――と、見くびっていたワシにこそ非はある。

 

ギ’:しかし―――オレ達もどちらか一方が守備に廻っていれば、あるいは・・・

ミ:そうですとも―――あなた一人で責を背負い込まれるな。

 

ギ:すまんな―――お二方・・・。

ヒ:・・・じゃあ―――アタイもお父さんと一緒に征かせて貰います。

 

ギ:ヒヅメ―――・・・そうか、お前も来るか・・・

 

 

〔そこにいた四人とも―――これが、敵方のあからさまなまでの罠である事は、薄々感付いていました。

 

けれど、このままでは次第に兵糧は欠乏していき、やがては剣戟を交えぬまま―――“全面無条件降伏”

と、いう、武人にとっては余り望まない結果を晒すことになってしまうだろう。

そのことにギャラハットは良しとはしませんでした。

 

だからこそ―――養女であるヒヅメとともに、的中の突破を試みようとしていたのです。〕

 

 

ギ:それでは―――ワシはこれから、ヒヅメとともに一時本城へと赴く。

  それまで、どうか持ちこたえて下されよ―――・・・。

 

ミ:閣下―――たとい兵糧がなくなろうとも、泥水啜りて草を食み、耐えて見せましょうぞ―――。

ギ’;それでは―――将軍もお気をつけて。

 

ギ:うむ―――。

  では、これより突破を試みる! 皆、ワシに続けぇ――――!!

ヒ:続けぇ〜〜―――!!

 

 

〔その砦・・・ビャクテイを、ミルディン・ギルダスの二将に託し、自身は敵中を突破し、活路を見い出そうとしていたのです。

 

―――が・・・しかし・・・そのことは、図らずも、こちらのほうでも手薬煉(てぐすね)を引いて待っていたことだったのです。〕

 

 

カ:(フ・・・どうやら相手側に動きがあったようだな―――)

  よし―――それでは・・・こちらも動く事としよう。

  だが、呉々も云っておいた通り、敵将は殺してはいけない―――・・・。

 

長:なんですと―――? しかし・・・こちらの三ケ中隊を、潰走させたほどの実力の持ち主・・・と、聞きましたが―――

 

カ:(フフフ・・・)『敵将を得ずンば、まづ馬から射よ』、卿らはこのことわざを知らないか―――?

 

長:はぁ―――? 敵将・・・を??

長:・・・さぁ〜〜?

長:初耳―――だよ・・・なぁ?

 

カ:・・・まあ―――この文言を唱えたのは、古でも優秀な将校の一人にも数えられた≪丞相≫という人物のものだ。

  それに遠巻きにして、その者の乗っている馬だけを射止めることが出来れば、相手も必死の抵抗を試みる事もなくなるだろう。

 

 

〔カインは―――慾っしていました・・・。

今、配下の兵長レベルの者ではなく、自分が詳しい説明をするまでもなく、命令を判別して動ける者を・・・。

 

だから、あの篭城線で、見事なまでの采配を振るっていた将―――ギャラハットを慾っしていたのです。

 

でも―――今までは、向こうから討って出る・・・と、言うことはせず、ただ頑(かたく)なに護っていただけなのに、

この度に限って討って出る―――つまりは、必死の抵抗を試みながら、自分たちの包囲の陣を突破しようとしているのを、

すでにカインは看破していたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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