≪二節;南へ―――≫
〔その一方―――こちら、ビャクテイ砦では、未だにギャラハットがカインに屈したのを知らず、
彼が戻るまで徹底抗戦の構えを見せている、ミルディンとギルダスがいたのです。
ですが・・・彼らは、ギャラハットが屈した事を知るのに、そう遠くない未来に、知ることとなってしまったのです。
なぜならば―――・・・〕
ギ:無事―――将軍は、ハルナ本城にたどり着けたろうか・・・。
ミ:―――だといいのですが・・・
ギ:ぅンっ―――? なんだ?あれは・・・
ミ:(カ・ルマの騎兵・・・)しかし、たった一騎で―――しかも丸腰・・・とは、
よもや使者なのでしょうか?
〔その砦に立て篭もる二人の前に、たった一騎で来た漆黒の鎧の騎士・・・
でも、しかしそれは―――ミルディンの云ったように“使者”には間違いはなかったのですが、
その騎士の伝えた事は、二人を愕然とさせるものだったのです。
しかし、それは仕方のないこと―――頼みとしていた、ギャラハットにヒヅメの二人が、
“強行突破”に失敗してしまい、カ・ルマの捕虜となっている・・・
―――そう、聞いたから。
でも、だとしたなら―――次は自分たちの番・・・
この場所に留まっていても、この方面の部隊は全てカ・ルマに吸収される事になってしまう・・・
と、そう思い、またも強行突破の第二弾が図られたのですが・・・〕
ギ:・・・クー・ナ本国帰還の途は、すでに断たれたか・・・
ミ:―――ですが、このまま敵の手にかかるよりか・・・
ギ:そうだな―――例え一時的に生き恥を晒す事になっても、この汚名は雪(すす)がねばならん。
ミ:・・・だとすると―――やはり、我々の生きる道は、ここしかありませんね。
〔彼ら二人が見つけた突破口―――
それは、北方にある自分たちの祖国、 クー・ナ ・・・ではなく、南方の ハイネス・ブルグ の、タワラメント―――
に、だったのです。
では、どうしてそちらに?
それは―――ホウキ・イナバ・サヌキの三砦並びに、チンソーをカ・ルマに取られ、見た目通りにビャクテイは孤立化していた。
けれど―――南方のそちら、タワラメントへは包囲網が手薄だった・・・
だから、今、自分たちが生き残る道は、そこしかない・・・と、思っていたのです。
そして―――ビャクテイの扉が開かれ・・・
―――と、同時に、ミルディン・ギルダスの率いる二ケ中隊が、突撃を開始したのです。
すると・・・なぜかしら、カ・ルマ側からの反応は何もなく、
この二隊は、揚々とタワラメント方面へ―――と、落ちて行ったのです。
それは・・・一体、どうして―――?〕
カ:・・・これで、良かったかね―――?
ギ:・・・うむ、彼ら二人には、この先、是が非でも生き延びてもらわねば・・・。
〔このとき―――カ・ルマ軍本営から、かのニ隊を見送った二つの目こそ、あのカインとギャラハットの二人・・・だったのです。
とどのつまり―――カインにしてみれば、今回一番に手に入れておきたい存在は、今、自分の傍にいるわけであるし、
ギャラハットにしてみても、元・同僚二人を討ち取るのは忍びない事だから―――
だから・・・なのです。〕