≪三節;“放置”される『重要参考人』≫
〔話題は一転して―――・・・
かつて・・・“夜ノ街”に君臨し、運悪く敵の手に陥ってしまった婀陀那は・・・
以前―――囚われていたカデンツァから、よりカ・ルマの内地に近いゴモラへと、移送されていたのです。〕
婀:(フフ・・・どんな手を使おうが無駄なことよ。
逆に、隙をついて脱出を図ってくれようぞ・・・。)
〔婀陀那は、以前囚われていたカデンツァで、本来の自分とは違う対応で、その場を凌いだのでした。
―――が・・・それを成してしまったおかげで、カデンツァの守将であるヨキから、手酷い目に遭わされ・・・
しかし、杳(よう)として成果のあげられなかったヨキは、
この虜囚の尋問をする・・・と、いう手柄を、実兄であるヨミに横取りされ、歯痒くも思っていたのですが、
婀陀那が移送されたところの守将であり、またこれから尋問をする者の事を知っていたがゆえに、
ヨキは小躍りして喜んでいたのです。
しかし―――婀陀那は、ここ・・・ゴモラの守将である“ドズル”のことを、何一つ知らなかったのに、
またも、その者を惑わせ、また隙さえあらば逃走を図ろう・・・と、していたのです。
ですが・・・一体どうしたことからなのか、婀陀那の口を割らせるべく、ゴモラへと移送されたはずなのに、
彼女は、向こう一週間も、地下牢に放置されたまま・・・だったのです。〕
婀:(ふう―――む・・・確か、妾は、重要参考人なのではなかったのか??
―――で、なくとも、以前(さき)には、あれほどの手厚い歓迎をされたというものじゃに・・・・
それを、こうも放ったらかしにされておるのでは、妾のヤル気も萎える―――と、云うものよ。)
〔実は・・・彼女には悪い癖―――“自分のなするべき目的に、障害があればあるほど燃えてくる”・・・と、いうものがありました。
それは―――幼い頃に、自分が したい と思っていたことも、
ただ・・・“列強”の、“統治者”の 娘 ―――だ、という理由だけで、反故にされていたから・・・
などと、こういうのも少なからずあったようで、それが少しづつ積み重なっていくと、
『どうせ反対されるのなら、せめて少なからずの努力をしてみて、それでダメなら本格的に諦めよう』
―――その“反骨の精神”が、根付いていたからでもあったようです。
その前に―――・・・ほんとうに、ゴモラの守将であるドズル某は、“あのヨキでさえも―――”
と、いうことを聞き及び、腰が引けてしまっていたのでしょうか。
いいえ・・・実はそうではなく、カデンツァからゴモラへと移送されてくる者のことが、ひどく気になり、
ギルド陥落の際、カ・ルマ側に寝返ってきた 情報漏洩者<ディープ・スロート> に、
自分がこれから尋問を行う者―――婀陀那の事を詳しく知るため、一時的に本国の首都であるコキュートスへと赴いていた・・・
これが、婀陀那の到着する一日前だったから、そこにいる属将のレベルでは、どうすることも出来ないまま、
仕方なく放置するしか手段がなかった―――と、言うことなのです。
そして―――カ・ルマ本拠地、コキュートスにて、やはり気になっていたかの存在・・・婀陀那が、
自分にも深く係わり合いがある事を知ったドズルは――――
これから行う尋問・・・いや、拷問に備えるために、一つのあるアイテムを用立てるのに疾駆していたのです。〕