≪二節;高札≫

 

 

〔そして―――そのことを高札に改めて、掲げたところ・・・予測どおり、そこには人だかりが―――

そのことをお忍びで見にきていたアヱカは・・・〕

 

 

ア:(ふふふ―――意外と好評のようだね。

  御覧・・・あの高札を見て、帰っていく者達のあの笑顔を・・・)

 

 

 :<それは―――そうでございます・・・。

  これからは、自分で耕してモノが、一生を通じて自分のモノとなるんですもの・・・。

 

  今まで、彼らが耕しているモノは、州の――――いえ、国からの借り物に過ぎないのですもの・・・ね。>

 

女:<それはそうだね―――しかも、今までは、そこから取れたものの、約半分以上を、私たちが搾取していたんだ。

  悪いことは見直されなければいけない―――当然の事だよ。

 

  それに・・・樹だって、登頂部ばかりに栄養が偏ってしまっては、いづれ幹が腐って自倒してしまうことになる。

  何事においても、 根幹 というものは大事なんだ・・・。>

 

ア:<そうですわね―――・・・。

  あら・・・?あの方は―――・・・>

 

女:<うん?どうしたんだい、アヱカ・・・

  あっ、あの人は――――“孝子”どのじゃないか・・・どうしたんだろう。>

 

 

〔アヱカ・・・いえ、女禍様は、その考察を見た人々の顔が、笑みに綻んでいるのを見て、一安堵つくのでした。

 

それもそのはず―――高札には、『これから自分が耕した土地は、永久的に自分のモノになる。』旨の事が書かれており、

それを見た民達は、“それならば―――”と、いうことで、躍起になっていたのです。

 

 

それに・・・そこには、あの“孝子”の農民も来ていたのでした。

けれども、なぜか彼の眉は、曇っていたのです――――・・・〕

 

 

民:―――――・・・・。

  (州公様は・・・分かっていなさるのだろうか。)

 

 

〔彼も―――この高札を見て、胸が踊らんばかり・・・・だったのですが、

永らく“農”に携わっていただけあり、ある一抹の不安が、頭の隅を過ぎっていたのです。

 

すると―――彼の背後にて、肩を叩く者が・・・〕

 

 

ア:(ぽんぽん)――――どうなされたのです、何かお困りごとでも?

民:(えっ・・・)あぁ〜〜―――っ!!

  あっ―――あっ―――あなた・・・・!!?

 

ア:(しぃ〜っ)あの―――・・・わたくしがここにきているの、内緒にしていただけませんでしょうか。

民:え―――・・・っ、で、でも・・・・

 

ア:―――では、こうではいかがでしよう。

  今、あなた様が悩んでいるその原因・・・それを解消させる事を、わたくしがお教えする―――と、いうのは。

民:ホ・・・本当に―――だ・・・ですか??

 

ア:はい―――勿論でございます。(ニコ)

 

 

〔不意に・・・自分の背後から肩を叩く者―――それは一体誰だろう・・・と、思って、孝子の農民が振り返ってみてみれば・・・

なんと、それは、お忍びで来ている州公様なのでした。

 

そのことにビックリして、大声を出しそうになった孝子を、慌てて・・・

『今、自分がここにきていることは、内緒にしてもらえないか』と、なだめようとしたのです。

 

その見返りとして―――今、この孝子が抱えているであろうという悩みを、州公自身が解消させるとして・・・〕

 

 

民:あのぅ―――・・・州公様、大丈夫なんですかい?

ア:はい―――なにが・・・ですか?

 

民:あ・・・いやぁ〜〜―――こんな、下々の方まで下りてきちまって・・・

ア:(うふふ・・・)そのこと―――ですか・・・。

 

  でも・・・この地は、元々あなた方“民”のモノなのです。

  それを―――わたくしたち地方の官は、貴方がたが暮らしやすいように、与り管理している―――

 

  それに・・・その事に関する“税”は、今までにも貰いすぎるほど貰っていますので。

 

民:(は・・・)はあ―――そうだったんだか・・・。

 

  それはそうと、皆浮かれすぎちまってるから、大事な事に目が届いていないみたいなんだども―――

 

ア:・・・・そのことですか―――それは分かっております。

民:だ―――だったらなんで・・・

 

 

〔孝子の農民が抱えていた悩み―――・・・それは、この地には『水』を引く設備が整っていない―――と、云うこと・・・

そのことを当然知っていたアヱカは・・・

 

でも―――アヱカも、何も無策で市井に下りてきているわけではなかったのです。〕

 

 

ア:実は―――そのこと・・・これから私が教えるやり方を、“誰か”に知ってもらい、

  それを広めてもらうために下りてきたんだ。

 

  けれど―――その“誰か”が、君で良かったよ・・・。

 

民:えっ―――?な・・・なして―――・・・

 

ア:だって―――(くすくす・・・)君は私の顔をもう見知っているからね。

  だから、今更自己紹介もいらないだろう?

 

民:あ・・・で、でも―――だったら何で、ご自分を隠したりしようとなさるんで??

 

ア:うぅ〜〜ん・・・まあ―――上の方で管理をしている者が、土に塗(まみ)れるというのは妥当ではない―――

  と、するのが大方の見解でね。

 

  そこは―――今も昔も変わらないことなんだけれども・・・

 

民:(はぁ〜〜―――)んで・・・・他ならぬあなた様の知っている『やり方』―――って?

 

ア:(うふふふ・・・)それは―――ね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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