≪六節;“龍”の目覚めを待つ―――州公≫
〔―――と、それはさておき・・・ 程なくして、庵の前に着いた一同は・・・。〕
ヒ:はぁ〜ン・・・なんか、辛気くせぇとこだなぁ―――
キ:(声が大きいッてぇの―――)―――州公様・・・お着きになりました。
ア:うん―――・・・。
お前達は、ここで待っていなさい。
キ:――――かしこまりました・・・。
〔その日は―――日差しのよい一日でした・・・。
しかも、それに併せるかのように、竹林を爽やかな風が駆けぬけ―――
余程に油断をしていたなら、つい眠りこけたくなるような・・・そんな麗らかな時期―――・・・
最初に、この庵の主を訪ねるために訪れたときと、何一つ代わり映えしない長閑(のどか)な処・・・
そして、あの時と同じように、庭の掃き掃除をしている姉弟が―――〕
ザッ――― ザッ―――・・・ ザッ・・・・
ア:やあ・・・ラクシュミ君、元気にしていたかい―――
ラ:あ・・・ガク州の州公様―――!!
ア:(ニコ)ユミエさん―――・・・
ユ:――――・・・。(コク)
〔州公アヱカが馬車を降り、すでに親しくなったラクシュミに声を掛けると、元気の良い返事が―――
それに連れられ、アヱカの顔も綻ぶのですが、ユミエは、一声かけると、ただ頷くだけなのでした。
でも、たったそれだけでも、庵の主である=典厩=なる人物が、いるということを察知できたのです。〕
ア:(そうか―――・・・)では主殿に、私が着たとの旨、伝えていただけませんか。
ユ:――――・・・。
ラ:・・・あの―――先生なら、今、お昼寝の最中なんです。
ア:(お昼寝―――)そうか・・・それなら、お目覚めになるまで、待たせていただくとします。
ラ:ふぅん―――じゃあ・・・こっちだよ―――
〔ですが・・・さすがに噂に立ち上るほどの人物でも、この陽気には勝てなかったのか、庵の内で一眠りしているようなのです。
しかし、そのことを取り立てて気にする様子も見せないアヱカは、彼が目覚めるまで待つというようです。〕
zzz・・・ ZZZ――――
ラ:ほら―――あそこだよ。
ア:(ぅん?)あの方が―――典厩なる人物か・・・。
それでは、ここで待たせていただく。
ラ:えっ―――でも、それじゃあ・・・
ア:いいんだよ―――今回もこちらが勝手に尋ねてきてしまったんだ。
だから、ここでお待ち申し上げる。
ラ:―――じゃあボク、もう少しお姉ちゃんと掃除の続きをしてくるよ。
ア:うん―――そうしておきなさい・・・。
〔かの―――州公様直々に庵に訪ねてきているというのに、庵の主である=典厩=なる人物は、
そのことすら気付かないのか、すやすやと眠っているのでした。
それでも・・・アヱカは何一つ愚痴ることなく、その庵の外にて、庵の主の眠りが醒めるのを待ちました。
そう―――・・・何時間ともなく・・・。〕