≪五節;お勉強嫌い≫
〔こうして―――タケルの助言を受け、決心も固まったアヱカは、現在の地位ガク州公をそのままに、幼君の『太傅』(たいふ)となることを決意したのです。
そしてアヱカは、使者のヨウとともに、再びウェオブリの地を踏む事になり―――・・・〕
ア:(・・・また―――こうして再び、この地に戻ってくることになろうとは・・・)
不思議な縁(えにし)なものだね・・・アヱカ―――
〔かつては―――国にある官のほとんどから疎んじられ・・・それは佞臣の意向もあり、
王の后であるリジュからは特に・・・だったのですが―――
なぜか今回は、彼女と忠臣二人からの意向により、再びウェオブリの地を踏む事になったアヱカ・・・
そんなことに不思議な因縁を感じながらも、これから第一になするべきは、幼い王子様の養育なのです。
そして―――城内に入ると、アヱカの来訪を誰よりも心待ちにしていた者が―――・・・〕
リ:州公殿―――よう参られた。
こちらに来られよ、ホウが待ちわびておる。
ア:(リジュ―――・・・)かしこまりました・・・。
〔それは・・・奇しくも、その城にいる者達の、他のどの誰よりも、アヱカの事を毛嫌いしていた、王后・リジュなのでした。
そのことに、多少なりとも訝(いぶか)しむアヱカなのですが・・・今はそのことを押さえて、幼い王子に会う事にしたのです。
ところが―――〕
ホ:イヤだ―――イヤだイヤだ!! お勉強だなんて・・・ボクはしたくないッ!!
官:あ―――嗚呼・・・王子様・・・(オロオロ)
官:ど・・・どうかご機嫌をお直しに―――(オロオロ)
ホ:うるさいっ―――! ボクに・・・こんな政治の話をしたから〜・・・なんて、分かるもんかっ!
官:あぁ―――あああ・・・王子様―――(くそ・・・このガキめが・・・)
官:お―――・・・お戯れを〜〜・・・(い・・・いい気になりおって〜)
リ:(はぁ〜〜・・・)これ―――ホウや、またグズっておるのかえ。
ホ:あっ!母さま・・・だってぇ〜今年度の税収や、この国の成り立ち・・・それに、法律―――だなんて、
まだボクにはむつかしぃよぅ〜〜・・・。
リ:(ふぅ・・・)これ―――そなたらも、相当に手を焼いておるようじゃな。
官:は・・・はぁ〜〜・・・
官:どうも―――申し訳ございませぬ・・・
リ:そこでじゃ―――ホウや、お前にはもっと相応しい者をつけるとしようぞ。
ホ:え・・・?また新しい先生呼んできたの?!
もう―――・・・ヤだよ、ボク・・・もうここの王様なんて、なりたくないよ!!
官:なっ――――!!
官:なんという事を・・・!!
リ:これ・・・ホウや―――そのようなこと、滅多と人前で口にするものではないぞ。
それに、この者達は試験的に登用したまでの事、そこへいくと、此度の者はイクやセキたちの折り紙つきでもある。
ゆえに・・・正式なお前の先生となるのじゃ。
〔やはり―――と、申しましょうか、未だ幼いホウ王子に、政治・治世の何たるか―――を説いたところで、所詮は無理難解であったこと・・・
それゆえに、また拒絶反応も最たるものだったようです。
―――と、そんなところへ、母であるリジュが入室をし、幼い彼のために選りすぐりの者を、ホウ王子の養育係として見定めた・・・と、そう宣下したのです。〕