≪六節;若い“太傅”≫
〔そして―――今、王后・リジュにより、直々に呼ばれた者が・・・〕
リ:それでは、入ってこれゃれ―――・・・
ア:・・・はい―――(ス・・・)
ホ:(あ・・・っ?!)お―――お姉ちゃん?
ア:(コク)はい・・・わたくしが、このたびお母上様からの命により、王子様のご養育を承りました、
アヱカと申すものです。(ニコ)
官:なっ―――なんと?!! こ・・・この若き女性が―――
官:太傅殿とおっしゃるのですか??!
リ:いかにも―――そうじゃが、何か問題でもあるのかえ?(ジロリ)
官:あっ―――い、いえ・・・
官:なんでも〜〜―――・・・
リ:そうであるか―――ではアヱカ殿、ホウのこと・・・宜しく頼みましたぞ。
ア:はぁ・・・ですが―――
リ:何か?
ア:・・・いえ、先ほど入り口で、王子様のお気持ちを伺っておりましたらば、お勉強はイヤだ―――と・・・
リ:(ふぅむ・・・)それは―――
ホ:・・・――――いいよ。
リ:(ぅん?)ホウ―――?
ホ:ボク―――お姉ちゃんが先生だったら・・・いいよ。
ア:アら、然様でございますか―――。
ですが、わたくしは、今まで王子様をお教えしていた方よりは、ちょっと厳しいかもしれませんよ?
ホ:うん―――いいよ、だって、お姉ちゃん初めてボクを面と向かって叱ってくれたんだもの。
〔幼い王子様の養育係に・・・と、呼ばれた人物は、女性―――
しかもホウ王子は、その女性の事をよく知っていました。
かつて―――その人憎さに嘲罵を続けた母に対し、『母親ではない』という滅多なことを口にし、なぜかしら、その人にホホをぶたれた事のあるホウ王子。
当初は、どうしてこの優しい女(ひと)が自分のホホを張り、その真紅の眸から泪をこぼしながら叱っていたのか分からなかった・・・
けれども、あの後よく自分なりに考えてみて、自分の母に暴言を吐いたから・・・と、いうのが分かったので納得したのです。
そして、こうも思ったのです、もし・・・あそこにいたのがこの女(ひと)ではなく、この国の官僚だったなら―――・・・と。
だから、王子様は、幼い自分なりに考えた上で、アヱカなら自分の先生でもいい―――と、言ったのです。
すると、アヱカからは・・・〕
ア:そうでございますか・・・。
では、早速お外のほうに参りましょう。
ホ:(え・・・?)お外・・・?
ア:はい―――(ニコ)
幸い、今日は日差しもよいですから・・・それに、やはり子供は元気に外を駆けるのが、本当の姿だと思いますから・・・。
リ:ふむ・・・確かに、それも一理ある。
今のうちに外で遊ばせ、丈夫な身体を作っておこう―――と、こういうことじゃな?
ア:はい・・・その考えもございます。
官:(なんと・・・)まだ何か他に??
ア:はい―――そういうことでございます。
それでは王子様・・・参りましょう―――
ホ:うんっ―――!
〔内にこもって机にかじりつくよりも、今のうちに外で自由に遊ばせ、病に負けないような丈夫な身体を作る・・・
そこには、王后とアヱカの共通の狙いもあったのです・・・が、実はアヱカにはもう一つの狙いが―――
それは、野にはいろいろな教育材料が点在しているということ・・・
今のうちに自然に溶け込むという形で、万物の理を知ってもらう・・・彼女とあの方には、そういう狙いがあったのです。〕