≪二節;大言壮語≫
〔それはそれとして、ではナゼキリエとヒの二人はガク州城に?
それはいうまでもなく―――〕
ヒ:おぉ〜い、ちょっといいかぁ―――
タ:(ぐび―――)おっ―――?!
キ:(はぁ゛?!)
ヒ:(―――って)をぉいっ!あんたナニやってんだぁ〜?!
タ:・・・やらんぞ―――この甕はワシのモノだ・・・。
ヒ:(おっ―――お゛っ―――#)てんめぇ゛〜〜こんの野郎!#
他人様が額に汗水たらして働いてるって時に、真昼間から酒ぇ〜飲んでやがるとは・・・
うらやま―――・・・じゃあねぇや、いい度胸してるぢゃねぇ〜か!##
タ:うん〜〜? ああ―――これか・・・
なんでも今期の新酒だそうだ、だからワシが利き酒をしてやっているのだ・・・(ヒック)。
キ:――――・・・。
(この者・・・アヱカ―――いや、女禍様がその才を見込んで、向かい入れた者と、同一人物なのか?
それに―――・・・机上にあるのは、おそらく・・・)
―――ここの州官たちが言っていたのは本当のようね・・・
ヒ:ァあ?ナニ言ってんだ―――司馬殿。
キ:アレを見なさい――――(くいッ)
ヒ:あ゛んっ―――?
――――なんだ?こりゃあ・・・机の上に積み重なってるの・・・(ガサ)
―――・・・こ、こいつは、民からの訴状じゃあねえか!!
や―――やいやいやい!一体こりゃあどうなってるんでぇ?!
〔キリエたち二人が州城に来た理由・・・それは、怠惰な州丞の素行を質すため・・・
と、そう思いがちなのですが、実を言うと、それはもののついで―――
でも、その“もののついで”が、目に付いたものだから、日頃州官達が囁きあっている噂も、相乗させていたのです。
しかも、その時には、タケルは酒の入った甕を前に、柄杓(ひしゃく)で飲んでいる最中―――・・・
これを見たヒが烈火の如く怒り、今にもとっ掴みかからんとしていたようなのですが、
キリエがよろしく、ヒの前に立ちはだかり、ある事を引き合いに出したところ、
タケルの口からはこんな事が・・・・〕
タ:―――ああ、それか、もう暫らくたまったら、ぼちぼちするつもりだ・・・(ぐびっ――)
ヒ:もう暫らくたまったら・・・だとぉ〜# こんの野郎―――!!##
キ:まァ―――待ちなさい・・・。
ところで―――あなた、周囲りの者達が、あなたの事をなんと言っているか判っているの?
タ:ぅん?周囲りの者達の評価―――?(ヒック)
ああ―――あんな者達の弁なんぞ、取るに足らない・・・・
それに―――あんな簡単な仕事、その気になれば一日で出来る。
よいかな、民の善性を高め、邪性を抑える・・・だが、抑えるだけではまづい―――
その邪性を忘れさせしめる・・・これが大切な事なのだ。
ヒ:(くぅおんのぉ〜#)口だけは達者なようだな―――!##
タ:ああ、結構飲(い)ける口なんだ。
ヒ:(むっかぁ〜っ##)だぁ〜れが“酒”の事を言ってるってよう!! あったまァ――――キタぜぇ!###
キ:まあ―――待ちなさいって・・・
私たちは別件でここに来たのだけれど・・・あなたの態度、見逃すわけには行かなくなったわね。
タ:(フフ・・・)ほほぅ〜―――もしかすると、査問にかけなさるおつもりかな?
キ:・・・そうね、あなたのその態度・・・改めないのなら、それも考えているわ。
タ:(フッ―――)おやおや・・・こわいねぇ―――(ぐび・・・)
キ:そこで――― 一つ提案なんだけど、あそこに山積みにされているの・・・明日までに終わらせなさい。
さもないと―――・・・
タ:さもないと―――?
キ:主上―――州公様に事の次第を報告し、あなたを更迭します―――!!
ヒ:なっ―――ぇえっ?!!
ちょっ―――とぉう?? あれ・・・どうみても一日じゃあ片付けられねぇんぢゃ・・・・
タ:・・・成る程―――つまり、ワシの命は明日までに延びた・・・いや、延ばされた―――
と、こう捉えてよろしいようですな。
キ:―――いかにも・・・。
タ:(ふふ―――・・・)それでは、今までの酒を抜くために、一眠りすると致しましょうか・・・
ヒ:ああっ―――おいっ・・・・って―――
タ:(ゴロリ・・・)Zzz・・・zzZZ――――・・・
ヒ:ね―――寝ちまったよ??
大丈夫なのかい―――実際・・・自分が窮地に置かれてる〜〜っていうのに―――
キ:さぁね―――それじゃ、私たちは一旦兵舎に戻るわよ。
〔その男は―――机上に山積みとされているモノの類が、取るに足らないものだと解していました。
けれども、その態度は他の州官達からしてみても鷹揚そのものであり、
これではアヱカ以前の州政に逆戻りだ―――・・・との声も、一部には現れだしていたのです。
そこでキリエは、自分の主が、タケルのその才を見込んでいたものかどうか―――
その確証を得るためにも、もし凡人にならば到底不可能なことを突きつけてきたのです。
それは―――山積みになってしまっている訴状の、全面解決―――・・・
しかも、期日は明日まで・・・それがもし出来ないようならば、更迭すらありえる―――と、したのです。
けれども・・・どこにそんな余裕があるのか、自分の命が明日まで―――
だというのに、タケルはそこに横臥し、すぐに高鼾(たかいびき)を掻き始めたのです。〕