≪五節;平伏の理由≫
〔そして―――まづはその事実を知るにあたり・・・〕
タ:――――以上を持って、ワシの裁きはお開きとする。
ヒ:お―――恐れ入ったぜ・・・。
あんなにあった訴えを・・・それも、一日すらかけずに、やり終えちまうなんて―――
キ:そうね・・・恥ずかしい限り・・・。
一度でも、主上の目を疑ってしまうなんて―――
タ:(ふふ―――)まあ・・・こちらとしても、州公様のお白洲を受けずにすんで、
胸をなでおろしておるところですよ。
〔その者の実力は―――最たるものでした・・・。
常日頃は、まるでヤル気のかけらさえ見せない―――と、いうのも、
彼にしてみれば、“州”という単位は余りに小さすぎた・・・
州の―――民の―――その山積みにされた訴えなど、彼ぐらいの度量からしてみれば、いと容易(たやす)き事だったのです。
そして、その事実に―――キリエとヒは、平伏をしていたのです。
その人物を―――・・・自分たちの知る、一般の将官たちと同じ目線で捉えていたから・・・
でも、彼の治政の手腕を見せられ、ヒは素直に―――キリエも、自身が知る古えの=丞相=を、
彼の姿に照らし合わせてそうしていたのです。
しかし―――気付きませんでしょうか・・・
だ―――と、したなら、あの山積みにされた訴えでさえ、取るに足らないというのであれば、
彼ほどの能臣ならば、定められた期日―――今日一日―――を目一杯使って・・・と、いうことも出来なくもないはずなのに・・・
ですが――― 一日を待たずして、須らく終わらせた・・・と、いう、
その真の意図に―――・・・
そう・・・そこで彼らは、この者―――タケルの更なる智謀の深さを思い知らされる事となるのです。〕