≪第三節;取り引きと、その代償≫
〔女頭領、何かを思い立ったらしく、急遽とある者の所へ使いを走らせたようです。
そう・・・昼間、事もあろうに、ヒジ鉄を喰らわせ、物別れに終わらせた、両替商兼鑑定士のところへ・・・
そして数分後。〕
ナ:あ・・・あの、何か御用・・・・で?
婀:うむ、先程はすまなかったな、まだ・・・痛む・・・か?
ナ:え??い、いえ・・・・。
婀:ハハハ、そう警戒せずともよい。 いや、実はの・・・アレからよう考えたのじゃが・・・
お主の願い、聞き届けてやらん事もない・・・・と、そう思うてな。
ナ:え・・・・?? な、何を・・・です???
婀:フ・・・なんじゃ、もう忘れたのか? ほれ、ここの・・・ギルドの専属の鑑定士になるという事じゃよ。
ナ:な・・・なんッ・・・でッ、でぇ???
婀:確かに、あの時は妾を謀(たばか)りおおせたお主が憎かった。
そして、その余りヒジを見舞った・・・・その事は謝ろう。
じゃがな、その後、色々とあってな?お主と妾の利害関係が一致した。
それゆえ、今回、今一度話し合える場を設けさせてもろうたのじゃ・・・・妾がな。
ナ:(ム、ム〜〜〜・・・・)
婀:まぁ・・・・アレだけの事をしでかしたのじゃ、今すぐに信じよとは、無理な話じゃが・・・・。
ナ:ホ、ホント・・・なんでしょうね。
また油断した時に・・・ってのはナシですよ?お互いに・・・
婀:フ・・・商談成立じゃな。
ところでお主・・・ステラバスターとか云う、男の事を存じておるか・・・?
ナ:え?ええ・・・よく・・・て、いうか、あいつとあたし、同じところの出なんですよ。
婀:ほぉう・・・どこの?
ナ:それは・・・教えられません・・・。
言っちまうと、あいつに嫌われるから・・・。
婀:成る程、とどのつまり、そなたもあの男の事を・・・。
ナ:ええ、そうですよ・・・で、なけりゃあ、ワザワザこんなトコまで追っかけてきやしない・・・。
それにね・・・あいつ・・・あの時から・・・あの人を失った時から、まるで人が違っちゃってさ・・・
昔はこんな事にまで、手を染める人間じゃなかったのに・・・。
婀:あの人・・・の事とは、よもやジィルガと云われるお方の事か?
ナ:え?ええ・・・そうですが・・・どうしてあなたがあの人の事を?
婀:うん?まぁ・・・・な、そうか、お主ら同郷の出であったか・・・なれば、あの者のしでかしそうな事・・・
ナ:ええ、皆までとはいきませんが、多少の事なら・・・
婀:そうか・・・なれば、あの者が使っていそうな、宿を教えて欲しいのじゃがなぁ・・・どうじゃ、頼めるか?
ナ:は?はい・・・。
でも、どうしてあいつが使いそうな宿なんかを?
婀:それは、お主の与(あずか)り知らぬ事・・・捨て置くが良い。
それより―――どうなのじゃ?
ナ:(ふぅん・・・使うといっても、ツケの取立てから逃げる時にしか使わないのにね・・・・)
可能性としては・・・・「J(みぎわ)亭」か・・・スラムの「左馬(ひだりうま)亭」・・・・。
婀:うむ!上出来じゃ!!感謝致しますぞ?ナオミ殿!
これ、何をしておる、早う認可の証を・・・。
さあ、心よう受け取られよ、これでお主は、ここの専属の鑑定士様なのじゃからな。
ナ:ハハッ!ありがとうに存じますッ!
〔こうして・・・鑑定士は、晴れて念願の、ギルド専属の鑑定士となる事が出来たのです。
これから・・・歴史を左右しかねない・・・そして、彼女自身には何のことはない、とある重要な情報と引き換えに・・・
そして、この鑑定士が帰った後で、ギルドでは、まさに急ピッチで、ある事がなされようとしていたのです。
それは・・・〕
婀:よいか!なんとしても、あやつらの手に落ちる前に! この方の身柄を、当ギルドにて確保するのじゃ!分かっておるな!
ギ:応ぅっ!
婀:よしっ!では―――行けぃッ!!
〔それは、カ・ルマ所属の騎士団より早く、姫君の身柄を確保するという事。
そして、今まさしくここに、策謀と、権謀術中が渦巻いていたのです。〕