≪四節;それぞれの思惑 T≫
〔そんな事とは、知ってか知らずか・・・・「左馬亭」での姫君は・・・〕
ア:ふ・・・ぅ――ホントに、食事をごちそうになった上に、・・・・今度は雨露を凌げる場所の確保・・・ですか・・・。
至れり、尽くせりですわね、わたくし・・・って。
(今頃・・・あの方は何をなさっているのかしら・・・)
あら、うふふ・・・・わたくしったら、国を失ってそう経たないでいるというのに、一人の男性をこうまで思ってしまえるなんて・・・・
(でも・・・でも・・・あの方、見かけよりも本当に頼りになるんですもの・・・・)
不謹慎ですよね・・・わたくし・・・って。
〔国が滅亡し、カルマに追い立てられた今日(こんにち)まで―――姫の心は休まることを知りませんでした。
それが・・・一時(いっとき)とは云え、人心地つけるようになった現在、姫はこれまでのことをしてくれた盗賊のことを想っていたのです。
本当は・・・国を滅ぼしたカルマ打倒を考えなければいけないのに―――どうしても脳裏に浮かぶのは、盗賊の姿・・・
自分より上背がないながらも、本当に自分の身になって尽くしてくれる異性の男性(ひと)に・・・
姫は・・・そう云った抵抗―――免疫がないからか、彼のことが気になりだしてきていたのです。
・・・・と、そう考えにふけっていた矢先―――〕
盗:―――おっ!いたぞ!!
盗:おお!そうか!!
―――よしッ!こいつだ!!間違いねぇ!!
ア:な、何者です!無礼な!! お控えなさい!!
盗:オッ・・・おい・・・どうする?かな〜り芯が強そうだぜ・・・
盗:えぇいっ!かまうか!
・・・これを使えっ!!
盗:おぉッしゃ!
ちょ〜ッくらごめんなさいよ・・・・
ア:ぅぐ・・・っ―――な、ナニ・・・を??!(な、ナニ?これ・・・だ、だんだん意識が薄れて・・・あぁ!た、助け・・・)
ス・・・・・ステ・・・・
〔いきなりけたたましい音とともに開けられた部屋の扉―――
するとそこには、人相の悪い男が数人いたのです。
しかも見れば―――自分の人相書きを手にし、どうにかしようと言う魂胆・・・
そこで姫は、気丈にも賊に対し振る舞いをするのですが・・・
そこはそれ―――コトを荒出たくない賊どもからすれば、残された手立てはただ一つのみ・・・
それが―――・・・
クロロフォルム;有機化合溶剤の吸引式麻酔薬。
この頃には、まだ滅多と市場に出回っていなかったが、盗賊達が、こう云った拉致監禁の手際の効率を上げるために、密かに購入していたものと見られる・・・
そして、状況の終了・・・・
姫君、目を醒ませると、未だ見たこともない部屋に、横たわされているのに気が付きます。
しかし、それはこの界隈・・・つまりは「夜ノ街」にはない調度品ばかり・・・
云うなれば、滅亡する前のテラのお城の、自分の部屋と酷似していた処だったのです。
もしかして、これは・・・・夢?
ですが、それにしては現実味がかなりあったのです・・・〕
ア:(ぅ・・・・・ん・・・・) ・・・・え・・・っ?!こ、ここは・・・どこ? お城??も、もしかして・・・夢・・・??
で、でも・・・この手触り、感覚は・・・・幻では・・・・ないわ・・・。
〔そして、未だ頭の整理がつかないでいる中、この部屋の主が顔を出したようです・・・〕
婀:おお、お目覚めですかな?テラ国の姫君・・・・。
ア:(・・・・え?) わ、わたくしの事を・・・・知っておられるとは・・・あなたは一体?!
婀:フ・・・、妾は、ここの組織「ギルド」の頭領でありますよ。
ア:(えぇ?!) あ、あなたが・・・・ギルドの・・・長?!
婀:いかにも・・・女だったので、面食らいましたかな?
ア:は・・・はい・・・。
婀:フフ、まぁ素直なことは、真に結構なことじゃ。
いや、実はな、さある者から依頼を受けておって、姫君の身柄を確保せよ・・・と、こうせがまれておってな。
それで急ぎ、心当たりのところを探させ、少々手荒ながらも身柄の確保に踏み切った・・・と、こういうわけなのじゃよ。
ア:(え・・・??)そ・・その、さある者・・・とは、もしやステラ・バスターというお方の事ですか??!
婀:うん?いや、さし当たってその者の名は聞いてはおらぬ故に・・・
ア:そ、そうですか・・・・そう・・ですよ・・・ね?
あの方なら、こんなにも人道的にもとる事はいたしませんから・・・・。
婀:・・・・・あなた―――様は、その者の事を、絶対的に信頼されておられる――――ので?
ア:・・・・はい。
婀:もし・・・この情報が―――彼の者の手によってなされた―――と、したなら?
ア:そ、そんな事・・・絶対ありえないことです!!
婀:成る程・・・つまり、姫君はステラ・バスターという男の事を、―――お慕い申し上げている――と、こういうこと・・・じゃな?
ア:そ、それは・・・そ、そんな事、あなたには関係のない事なのでは??
婀:オオッと、これは失言でしたな、許されよ・・・・。
じゃが、しかし―――寝ておる時に、しかもうわ言のように・・・・その者の名を幾度となく、繰り返し、繰り返し・・・言っていたものでしてな・・・・。
ア:ええっ?!そ、そんなに?? 言って・・・いました・・・か?
婀:そう・・・・何度も、何度も・・・な。 そして妾はいたたまれなくなり、隣の部屋に緊急避難した次第よ・・・
(あまりに、悋気(りんき)に病んだものでな・・・)
ア:あぁ・・・そ、そうでしたか・・・わたくしのふしだらなうわ言のせいで・・・どうか・・・どうかお許し下さいまし・・・。
婀:(・・・・成る程、やはりこういうことか・・・。 こうも体よく謝られたのでは、大概の者は戦意を挫かれる・・・
彼奴等(きやつら)が恐れるも無理はないことか・・・・)
いや・・・・詮無き事よ・・・。
〔女頭領、この拉致・誘拐まがいの事の説明を、半分は真実を、もう半分はウソを交えながら、姫君に伝えたようです。
そして姫君、拉致されてから、頭領の部屋で寝かされている間も、あの盗賊の名を呼んでいたようです。
(羨ましいですね、想われている・・・って)〕