≪三節;険悪な雰囲気≫
〔それからタケルは、ガク州軍の陣営に顔をだし、今回のカ・ルマ軍撃退を労(ねぎら)おうと思っていました。
けれどそこには―――・・・〕
タ:(ぅん―――?)どうかしたのか。
兵:えっ?ああ―――軍師殿・・・いえ、実は―――ですねェ・・・
兵:うちんとこの大将お二人が、急に仲が悪くなっちまってるんでさぁ・・・。
タ:ほぉう―――では、それを見せてくれんか。
兵:えぇっ―――い、今・・・ですか??
兵:そらぁ―――ちょっとまづくないです??
タ:(フ・・・)あんたらが申し立てたところで、ワシには何一つわかりはしない。
だからこの目で見てみるというのだ、そこを通してくれんかね。
〔―――なぜかしら・・・そこでは、ガク州司馬と副将である者が居ると思われる天幕を、
ガク州兵たちが、どこか余所余所しげに遠巻きにしているようであり、
つまりそのことがタケルの怪しむ要因となっていたようです。
しかし―――理由の如何を質してみれば、この防衛線が鎮圧される頃に、両者の中が険悪になったらしく、
ガク州兵たちでは、近付く事さえ儘ならなかったようです。
それでも―――例えそうであっても、この男には理屈として通るべくもなく、
半ば“火中の栗を拾う”モノだとしても、自分の目で見ないことには―――と、思い、
あえてその天幕の中へと入っていったのです。〕
タ:失礼いたします――――
キ:あっ―――・・・(ビク!)
ヒ:・・・・よう、あんたかい――――どうかしたかい。
タ:(・・・・・。)
いえ―――どうやら何の問題もなく、カ・ルマよりの侵攻・・・防ぎきったようで、
まづはそのことのお礼に―――と・・・
ヒ:はっ―――そんなことかい・・・あんたが気にするまでの話しでもねぇよ。
―――また・・・・今回もたまたま・・・運が良かっただけだい。
タ:―――そうですか・・・時に、司馬殿。
キ:(ビク!)は・・・はい―――なんでしよう・・・
タ:いつもは元気であるあなたが、この度に限って憔悴し切っているように見えるのは、気の所為―――なのでしようか・・・?
キ:い―――いえ・・・きっと・・・気の所為―――だと思います・・・。
タ:(ふぅむ・・・)虎鬚殿―――
ヒ:オレァそんなことは知らねぇよ―――・・・
タ:(・・・なるほど―――)
そういえば―――今回の闘いでは、向こうからは『山羊頭をした一つ目の巨人』が投入された・・・とか。
キ:―――――・・・・・。
ヒ:――――・・・。
タ:それについては、心当たりは・・・?
ヒ:・・・・さぁな―――オレには判からねぇが、
そこにいるヤツァ何か知ってるかもな。
〔この天幕に入った当初は―――何気ない普段どおりに感じました。
ですが、それは飽くまで“当初”の話―――そこで会話をなする事により、あることが如実に露呈し始めたのです。
それは・・・確実に、この両者の間に亀裂が生じている―――と、いうこと・・・
では、どうしてそう言い切れるのでしょうか―――
それは・・・
タケルは、キリエにあることを訊いたあと、それと同じ事をヒにも訊こう・・・と、思ったのですが、
彼からは、まるで突き放すかのような―――いや、あることに触れられたくないように“知らない”とだけ云い、
また、“ゴート・サイクロップス”の事について訊こうとしても、
同じ天幕に・・・しかも、自分の上司である者に対し、そこにいる“ヤツ”と、だけ云い―――その天幕を出た・・・
どうやらコトは、想像した以上に深刻だったようなのです。
それでも、かのゴート・サイクロップスの事を訊きだすために、キリエに問いかけたタケルは・・・〕
タ:キリエ殿―――
キ:う・・・・っ――――うぅぅ〜〜〜――――(ポロポロ)
〔しかし―――そのことを質そうとすると、急にキリエは、その目から大粒の泪をこぼし始めたのです。〕