<第四十一章;推挙状を携えたる者>

 

≪一節;ある別れ≫

 

 

〔フ国の一部ガク州が、兇悪の元凶であるカ・ルマの侵攻を受けている―――と、同じ頃。

南西の方角にあるサ・ライの一地方クレドナにて、ある別れが・・・

 

でもその別れも、泪ながらのものではなく新たなる旅立ちの―――いうなれば“巣立ち”のそれに似通っていたのです。

 

今―――ある建物から、一人の少女と、道を別れ別れにする一人の女性・・・

―――と、その女性を、見えなくなるまで見送った少女の口から、こんな言葉が。〕

 

 

ヱ:(フ・・・私が知りうるだけの、あやつの情報は総て与えてやった・・・。

  後はあの子の―――ニル・・・お前の娘であり、血を引き継ぐゼシカが、どう取り扱うか・・・だが―――

  ナニ、気にする事はないよ・・・お前の娘なら、十分にやっていけるだけの技量は持ち合わせている―――

  そうだろう・・・・?)

 

                                                        

――――同胞よ・・・――――

とも                 

 

 

〔その少女 ヱリヤ は、彼女が昔からの知り合いであった、 ニルヴァーナ の住まいに身を寄せていました。

 

けれど、哀しむべき事に、ヱリヤが会いに行った存在は、もうすでに過去の人となっており・・・

ですが、しかし―――その血を受け継ぐ者はいたのです。

 

それが―――その姿が見えなくなるまで見送っていた存在・・・

ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリ

 

その彼女に―――彼女の母親が、自分たちと苦楽を共に分かち合い、時には衝突を起こしたりもした・・・

そんなことを交えながら、自分が知りうるだけの、ゼシカの母親・・・

ニルヴァーナ=ヘカテ=ヴェスティアリ

その彼女の遺業を継がせようとしたのです。

 

 

そして、ゼシカが見えなくなり、少女・ヱリヤは―――・・・〕

 

 

ヱ:さて―――と・・・用も済んだし、穴蔵にでも戻るとしますか・・。

 

  (おおっ―――と・・・)フフ・・・いけないいけない、どうも長く人ごみにもまれた所為で、言葉が年寄りじみてきている・・・

  まだまだ、気は若いつもり―――なのだけどね・・・。

 

  (ん―――? おや??)あの星の輝き―――余り良い方角ではないし、いけ好かない色をしている・・・

  ――――何事もなければいいんだけど・・・。

 

 

〔それからのヱリヤは、特別に何をするでもなく、自分の棲み処であるゾハル山の洞窟に戻るようです。

 

ですが―――その時に見かけた、北西の方角・・・(ガク州方面であり、カ・ルマも同じ方角)に、煌めいている蒼白き慧星に、

ただならぬ胸騒ぎを覚えていたようです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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