≪五節;“実の母”その正体―――≫

 

女:≦実は・・・彼女は純粋なヒューマン、人間なんだ。

  けれど、君も疑問に思ったように、彼女は私たちの知り合いでもある。

  そう―――七万年前に、実際に生きていた私たちと・・・

 

  けれど、君も知りえているように、ヒューマンの寿命は短い、せいぜい長く生きられても100年がやっとだろう。

  でも・・・ニルは今の時代にも生き、そして君を産み落とした―――ナゼだか分かるかい。≧

 

ゼ:えっ―――さ・・・さぁ・・・

 

女:≦それはね―――『クローニング』という技術なんだ・・・。≧

ゼ:“クローニング”?

 

女:≦そう―――この“クローニング”とは、生物の細胞からそれとまた同じような存在を創り出せるという技術なんだ。≧

ゼ:そ・・・それじゃあ―――私のお母さん・・・

 

女:≦そう・・・ニルヴァーナのオリジナルも、もう七万年前には亡くなっている・・・。

  今まで行き続けていたのは、彼女と同じ容姿を持ち、同じ思想・思考を持ち、同じ理念の下に活きてきた存在なんだ。≧

 

 

〔そう―――今の時代に生きていたニルヴァーナ=ヘカテ=ヴェスティアリとは、七万年前の“複製”だった・・・と、いうこと。

でも、そのクローンたちは、オリジナルのニルヴァーナと同じ容姿・行動・理想を持ち合わせており、

少しでも“オリジナル”とは違いがなかった―――と、いうこと・・・

 

それでも、いかばかりかの疑問も残っているのです。

 

そう・・・では、どうしてそんな高度な技術がありながら、“現在”を生きていないか―――と、いうこと・・・

しかし、それは・・・〕

 

 

女:≦でもね・・・度重なるクローニングは、そのデータを劣化させてしまうんだ。

  一回や十回ならいざ知らず、何万回もクローンニングを繰り返していては、いくら精巧なモノでもやがては劣悪になってしまう・・・

  そのことを承知していたマエストロは、君のお母さんに相談した上で、ラストナンバーである素体に 徴(しるし) を施した・・・

  それが―――これなんだよ・・・≧

 

 

〔いくら精巧なコピーでも、コピーのコピーからではいづれ像がぼやけてくる・・・

そのことを知りえていた往時の能臣――マエストロ――またを=丞相=と呼ばれた者は、

ゼシカの母に了承を取り付けた上で、“最後の素体”に『終わり』を示す、とある文字を入れたのです。

 

そしてしばらくして、ゼシカがヱリヤより手渡されていた文書に目を通した女禍様は・・・〕

 

 

女:≦ふぅん・・・どうやらあの子も元気でやっているようだね。

  おかげで安心したよ。

 

  それに・・・ニルのやってきたことを直接あの子から訊いたんだね。

  よし―――いいだろう、それじゃあゼシカ、君にはここ―――シャクラディアにある各セキュリティのメンテナンスと、

  システム類のチェックをしておいてくれないかな。≧

 

ゼ:(へ・・・)は―――? め・・・メンテナンス―――ですか??

  えぇ〜〜ッと・・・確かここ―――ドルメンですよね。

 

女:≦そうだよ―――でも、疑いがあるようならば、少し見てみるかい。≧

 

 

〔ヱリヤが書いた“推挙状”・・・そこには―――

―――古えの同志、もしくはそれ以上の能力を有している者にて候―――

―――ゆえにそれ相応の対処なするべくにて候―――

―――かしこみ給はる―――

                                             =プ・レイズ=

―――と、いう解釈の文言が書き連ねてあったのです。

 

そこで女禍様は、自らの住まいであり、持ち物であり、かつての“皇城”であった処の、

各セキュリティ類の全メンテナンスを任せたようなのですが・・・

ゼシカにしてみれば、ここは古い昔の遺跡であり、ではどうしてそんなものなどが、ここにあるのか―――が不思議だったのですが・・・

ある場所に案内された事により、その疑問は払拭され、早速作業に取り掛かったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>>