≪四節;“策士”の思惑≫
ギ:おい―――そこの・・・待ってもらおうか。
輜:えっ―――?あっ―――! あ・・・あなたたちは・・・!!
ミ:(やはりな・・・)その物資―――どこにもって行くか、こちらではすでに把握している。
だが、そうはさせないのが、私たち二人の役目―――・・・
輜:うっ―――うぅぅ・・・
ギ:お前たちも―――元はといえば、オレ達二人と同じ釜の飯を食った仲じゃないか・・・
それを―――ここ最近で、お互いが敵同士になっただけで、すぐに剣を交わらせる事が出来るか??
輜:うぅ・・・ううぅ・・・で、ですが〜〜〜しかし――――
ミ:そなたらも―――あの黒き国に、その身まで捧げたわけではないのだろう?
私たちとしても、そなたらを手にかけるような真似はしたくない。
お願いだ―――ここは、このまま・・・退いてもらおう―――・・・
〔今回のカ・ルマ軍の侵攻を務めるヨキ・ヨミの軍から、程なく近しいクー・ナの兵糧庫・・・ジュウテツ。
ここより出発した輜重隊だったのですが、その構成は、紛れもなく元・クー・ナの兵士たちでした。
ここまでで、今回の作戦の約五割は手中に収めたのも同じ―――
なのですが、これからが一番肝要なところ、そう―――余り刺激を与えずに、“今回は手を引くように・・・”と、促せたのです。
すると―――?〕
輜:うわわぁぁ〜〜――――っ!! い・・・命ばかりはお助けをぉ〜〜―――!!
=逃走=
ギ:・・・・(呆ッ気)・・・・なんだ?ありゃあ―――
ミ:・・・・(呆ッ気)・・・・ですが―――まあ、一戟も交えずに退いてくれた事ですし・・・
それに―――
ギ:うむ―――補給物資を置いて・・・とは―――
〔なまじ、元・自分たちの国でも、名の知られたる雄将の二人―――ゆえに、自分たちでは到底敵う筈もないと見たのか、
輜重隊の連中は、運んでいた補給物資をその場に置き去りにし、一目散に逃げ去っていったのです。
そのためにこの二将は、なんの苦労もしえず、まんまと物資だけを鹵獲するにいたったのです。
――――ですが・・・本当にそうなのでしょうか?
それでは・・・輜重隊が引き上げていった、拠点・ジュウテツでは――――・・・〕
ザ:(ギャラハット=シャー=ザンフィル;同節ではギルダスがいるために、ここでは『ザ』と表記)
――――ごくろう・・・
輜:はっ―――総て指示通り、物資を敵中に置いて参りました。
ザ:うむ―――
輜:しかし―――カイン殿には驚きです。
兵站線に現れてくるのが、あのお二方だということを、ものの見事に看破されて―――
それに、この任をカ・ルマのやつらではなく、どうして元・クーナの我等に充てたのか・・・ようやく判りました。
ザ:(フ・・・)まさに―――深慮遠謀とはこのこと・・・だな。
〔そう―――総ては、カインの謀略に他ならなかった・・・
クー・ナが滅亡する、その前に、ミルディンとギルダスの二人を、ハイネス・ブルグへと見逃したのにも、
ある意味―――こういった策の一環を担っていたとも、思えなくもなかったのです。〕