<第四十四章;亡命>

 

≪一節;妬みと恨みと確執と≫

 

 

〔この度、陥落させられたクレメンスより、実に大胆なる戦略を持って、

ハイネス・ブルグの王都であるハイレリヒカイトの、外曲輪である衛星都市ダイスローグを陥とさんとしていたヨキとヨミの兄妹。

 

ところが―――・・・頼みとしていた補給物資は届く事はなく、早くも兵糧が枯渇し始めていたのです。

 

それであるがゆえに、一旦クレメンスより引き上げ、策を練り直した上で、再三に渡る補給の打診を、

カインのいるチンソーに、しては見るのですが・・・〕

 

 

ヨ:なんだと―――?断られた?!!

伝:はっ―――

  なんでも、カイン殿の申すには、大事な補給物資を敵に掠め取られるとは何事か―――と・・・

  それに、兵站線の確保も儘ならないまま、軍を動かしているほうにも落ち度があるのではないか・・・と。

 

ヨ:なんだとぉ〜〜―――っ、お、おのれ・・・カインめ!!

  今のこちら側の士気を持ってすれば、ダイスローグなど眼中はないのだ!!

  それをぉ〜〜―――・・・っ!!

 

ョ:兄さま・・・ここは一つ、コキュートスに口上を立ててみてはどうだろう?

 

ヨ:なに? ふむ・・・そうだなぁ―――・・・

  よし、ならば出来るだけ悪辣なものを並び立てておいてやろう。

  (フン―――カインめ・・・私たちを敵に廻したこと、後悔させてやる・・・)

 

 

〔ものの見事に、体(てい)よくその申し出を突っぱねられたヨミは、

自らの策の落ち度をそのままに、今回カインがなしたこと・・・それも、ある事ない事を書き連ねた文章を書簡にし、

魔都・コキュートスへと送ったのです。

 

でも・・・その書簡に目を通した者は――――〕

 

 

シ:はあ〜〜?なんだい、こりゃ・・・。

 

  ―――――ヤレヤレ、醜いッたらありゃしないねぇ。

 

ビ:いかがなされました―――

 

シ:ああ―――ホレ、こいつを見てみな。

ビ:では拝見いたします―――

 

  ――――・・・・これは・・・

 

シ:ああ〜早い話し、妬みの文言だよ。

  味方であるはずなのに、まるで敵のように書き添えてあるとは・・・ねぇ。

ビ:(フフっ――)ですが・・・強(あなが)ち―――

 

シ:間違っているとも――――(フフン)思えないかぁ〜〜い。

  だが―――まあ・・・いいだろう。

 

  このままカイン殿だけを悪者にするわけにはいかない、万が一でもその糸が――――――

 

ビ:我等につながっている―――と、感付かれても、面白からぬ話し・・・

 

シ:(ニャリ)それじゃあ・・・・怪しまれないように、行ってみようかぁ〜〜―――?♪

 

 

〔ヨミからの―――いわば讒言の書簡を目通ししたのは、奇しくもシホなのでした。

 

しかも―――彼女のよき下僕でもある(?)ビューネイにも目を通させ、

結果的には目の向けどころが間違ってはいない――――とはしながらも、

それがやがて自分たちも・・・と、いうことは、やはり好ましくないらしく・・・・・

 

ですが―――シホの気になる一言・・・“怪しまれないように”とは―――??〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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