≪三節;仕方のない事・・・≫
〔ところ一方変わって―――こちらダイスローグでは・・・・〕
イ:――――なんですって?? こ・・・このまま、ここで年を明かせと?!!
使:はい―――それには、目と鼻の先に敵がいるではないか・・・と。
リ:くっ―――・・・。(あいつ等・・・完全に私たちを番犬扱いね。)
セ:(けれど・・・そうであることに変わりはないわ、イタイところを衝かれたわね。)
使:では―――よいお年を。(ニャリ)
〔彼女たち三人に降りた新たなる指令・・・それが、現在駐屯しているダイスローグに留まり、
宜しく敵軍を牽制するように―――だったのです。
ですが、それは表面上でのこと・・・そう、つまりハイネスの官僚たちにとっては、格好の厄介払いともなっていたのです。
それを聞いた、ミルディンとギルダスは・・・・〕
ギ:なんだと―――?? そんなバカげた話しがあるか!
ミ:そうですとも―――彼らは過酷な現場にて、身を危険に晒さないばかりか、
奥のほうに引きこもって懊悩としているのですよ。
イ:―――――・・・。
セ:―――――・・・。
リ:―――――・・・。
ミ:・・・・ナゼそこで言い返さないのです?!
それに、こんな指令の、どこに正当性があるとでも??!
ギ:ああ――――全く、他人様(ひとさま)をバカにしているにもほどがある!!
〔そこには当然の如く、彼ら官僚たちの肚を見透かした上で激昂(げきこう)していた二人の姿が・・・
ですが、そんな彼らを余所に、彼女達三人は口をつぐんだまま―――
けれど、仕方がなかったのです―――不服があるとしても、そうすること以外ないということに・・・
だから―――だったのかもしれません・・・次に“雪”の将が吐いた言葉も、当然と云えば、当然だった・・・・〕
イ:・・・・あなたたちには―――判るはずもありませんよね・・・(ギュ――グググ・・・)
すでに“国”というものを亡(うし)ない、自分しか・・・考えられない、あなたたちには―――(ギリィ〜)
セ:―――――・・・。
リ:――――・・・。
ギ:(ムん―――?)
ミ:――――なんという事を・・・私たちは、あなた方のためを思って・・・
ギ:やめとけ―――ミルディン・・・
ミ:ですが―――ギルダス!!
ギ:・・・・成る程なぁ――――つまり、あんたたちはオレ達の事を、そういう眼で見てたのか・・・判ったよ―――
いくぞ―――ミルディン・・・・
〔彼女達は―――嬉しくもあり、また、悔しくもありました。
でも・・・やはり自分たちは、この国に忠誠を誓ったものであり―――
少し言い方を変えるなら、首輪をされた番犬も同然だった・・・
そこへいくと、ミルディンとギルダスも、ほんの少し前までは『クー・ナ』という国に忠誠を誓った者達・・・
しかし―――今は・・・国を亡ない、いわばフリーランスの傭兵も同様。
けれど、そんな彼らに擁護されるような象(かたち)をとられても、あんな風な言い方でしか返せなったのは・・・
未だ自分たちが、ハイネス・ブルグに忠誠を誓っていたから―――
でも、ここ最近におけるむべもない仕打ちに、彼女達ばかりだけではなく、
彼女達の配下の兵士たちも、不満の導火線が点き、今にも爆発しそうだった―――・・・
なのに、自分たちの本心とは裏腹なことを吐かなくてはならなかったのには、
やはりそれ相応の背景が、そこには用意されていたと云っても、差し支えはなかったことでしょう・・・。〕