≪六節;見知らぬ女≫
〔それから―――四つと五つの刻が過ぎ去り・・・
次にリリアが目覚めたときに、彼女の目にしたものとは――――〕
リ:う―――・・・うぅ・・・(ぼ〜・・・)
ギ:オっ――― 目が醒めたようだな。
リ:(はっ――!)こ・・・ここはどこ―――?!
ギ:(フ・・・)リリア殿―――あんたも隅には置けないな、
何しろオレ達が内緒事しているのを、聞き耳立てるんだから・・・。
リ:・・・・。(キッ――!)
そういえばミルディンさん―――あなた私たちの領内で何をしていたの?!!
それに―――あの女の人は、誰??
ミ:リリア殿―――・・・
鵺:・・・・その―――“女の人”って、私の事?
リ:ナニっ―――!?(クル) あ・・・あなた?!!
鵺:ずいぶんと―――活きのいいことね・・・。
そんないい格好で、気の強いことを言ってのけるなんて。(クス)
リ:〜〜―――なんですって?!
(し・・・しかし、それにしてもなんと言う冷たい視線―――
その眸には光が宿されていない―――・・・だ、なんて・・・はじめてみるわ、こんなの・・・)
鵺:(フフ―――フフフ・・・)本来なら―――私たちの密会の場面を見た者は、須らく刃を加えてあげるのだけれど・・・
ギ:オ――――オイオイ・・・
ミ:それでは―――困る。
鵺:私が主と仰いでいる方に感謝することね・・・。
私の主は、決して“そういうこと”は望まないお方だから。
〔とある建物に軟禁状態にされているリリア―――と、客将であるミルディンとギルダス・・・
――――と、それとあともう一人、『禽』の=鵺=。
その“あと一人”を見たとき、リリアは身を強張らせました。
それもそのはず―――己の眼前に居る者は、所詮“モノ”としか捉えておらず、
それを壊す事に、何の躊躇いを覚えない者であり、その言葉だったのだから・・・。
でも、その者の“主”は、そういうことが好きではない者であるためか、=鵺=もそこまでの事を行わないようだったのです。
―――だとしたなら、どうして=鵺=は未だこの場所に??
それもどうやら―――・・・〕
鵺:それでは―――どこまで話しましたか。
ミ:これから―――三刻余り経ったあと、私はセシル殿のところへ―――
ギ:―――で、オレはイセリア殿のところへ・・・
鵺:(フフ・・・)今度は―――手際よくお願いいたしますね。
リ:ちょ―――ちょっ・・・ナニを話しているの?あなたたち!!
鵺:・・・今、何も出来ない人は、黙っていて頂戴―――(ピ・ン――☆)
ぷ☆す
リ:―――!!(な・・・ナニ?これ・・・か・・・身体が痺れ―――)
ぅが・・・うぐ・・・・(ぇえっ?! こ、声までも!!?)
ギ:お―――おい・・・お前さん、今、一体ナニを・・・
鵺:これで―――静かにはなったでしょう。
それに、身体を麻痺させるところにも打ってあることだし―――・・・
それと、“殺すな”とは言われてはいるが・・・ここまではするな、とは云われてはいない―――
ミ:しかし―――それがジン州公のお言葉とは・・・
鵺:勘違いをしてくれては困る―――私は、ジン州公の配下などではない。
リ:(ぇえっ?!で・・・ではどこの―――) うがが―――・・・うぐぐ・・・・
ミ:(リリア殿―――・・・)では、どこの―――
鵺:(フフ・・・)そうですね――― 一言で言い表せるのなら、この国・・・いや、この大陸の征く末を、ずっと先のほうまで捉えているお方・・・。
あなたたちのような―――狭義でしか、物事を捉えていない・・・お方―――
ギ:・・・今、二言いったな。
鵺:あら・・・(クスクス)それは私がおしゃべりだから―――
それでは、件(くだり)の事宜しくお願いしますね。
〔この・・・“冷徹なる者”である=鵺=が、未だにミルディンとギルダスの二人と、なにやら話していたというのも、
これから彼らがなする事―――しかも、それは余り褒められた事ではない・・・
しかもその標的は、なんと自分を含める“花”のセシルと“雪”のイセリア―――つまり『三将』だという・・・
その事実を知り、身を強張らせながらも、この三人を睨みつけるリリア―――・・・
ですが、哀しいかな―――今、自分は=鵺=の手により、身動きが取れないように縛り上げられており、
しかも彼女の扱う“針”によって身体の自由・言語を奪われてしまったのです。
そう―――彼女がしてやれるのは、これから起こる事を、ただ目の前でじっと見ることしか出来ない・・・
『なんて自分は無力なのだろう・・・』と、痛感せざるを得なかったようです。〕