≪八節;状況の開始―――A“雪”を確保せよ≫
〔そして―――また一方のイセリアの宿宅では・・・〕
――ドンドンドン――
ギ:(・・・これだけ扉を叩いても出てこないとは―――
それに、部屋の灯かりも落ちている・・・)
配:ギルダス様―――早くしないと、予定の時刻に・・・
ギ:判っている―――
(ふぅ・・・)余り“力ずく”というのは趣味ではないが、このさい止むを得まい―――・・・
――ジャキン☆――
〔家の者を誘(いざな)うために、数度となく叩かれる扉・・・
でも、中々出てこない―――しかも部屋の灯りは消えているというのです。
それに“時間”のほうも―――と、あっては、ギルダスも止むを得ないとしながらも、強行の手段を―――
そう、自らの佩剣“グラディウス”<ヴァルムング>で、取っ手を斬り落とし、邸内に押し入ったのです。
すると―――やはり、寝床には早めに就寝をしていたイセリアが・・・
イセリアは、ここのところ疲労が溜まっていました・・・。
許婚の死―――それに伴う官僚たちからの糾弾―――そして、年を戦地で越すということ・・・
もう・・・何もかも嫌気が差し、このまま敵前逃亡でもしてやろうか―――と、さえ思っていたのです。
けれど、それをしてしまっては、許婚であったあの人は許してはくれないだろう・・・
その、もう報われぬ思いだけで、この国に留まっていたのです。
しかしながら―――・・・
明日の朝も早いから―――と、疲れきった身体を横臥させ、眠りに就いたイセリア―――・・・
でも、彼女もここハイネスを代表する将校であったがためか、自分のいる宿宅に侵入し、
自分が就寝している部屋に何者かが入ってきた事に、気付いてしまったのです。〕
イ:――――!!!
ギ:(ガ・・・ッ)・・・・・すまんな――――
ド ☆ ス
〔自分の部屋への闖入者―――何者か・・・と、目を見開いたとき、その者は手を顔で覆い、『すまない』―――と、だけ云い・・・
当て身をして、イセリアの気を失わせたのでした。〕