≪四節;打ち据える者≫
〔けれども―――そこにいたのは、聞き違いや見間違いなどではなく、本物の公主様なのでした。〕
紫:――――どうやら、この者のようです・・・。
公:ほう―――・・・で、何か聞き出せたのか。
衛:い―――いえ・・・それが、捕らえて三刻は経つんですが、
オレの言っている事が判っているのか、判らないのか―――返答すらしないんです・・・。
ま―――どうせ、難民の類なんでしょう・・・
〔意外性に富む、大物中の大物―――ヴェルノア公国の施政者である公主様が、
たった一人の不審人物のために、城の外にある衛兵詰め所に出向いている・・・??
そんな不思議なことに囚われながらも、その衛兵は、この不審な女を捕まえ―――そして今までの経緯を述べたのでした。
しかし、紫苑は――――〕
紫:・・・いや―――もう、この女の素姓など割れている・・・
不:(ピクっ!)
衛:えっ?? “素姓”―――って、紫苑卿は、この女が何者なのか・・・ご存知でいらっしゃるのですか??!
――すると いきなり――
ばきいっ―――☆
不:ぁ・・・・ぐうっ!!
がたぁ〜ん!
紫:(がっ―――)・・・・探したぞ、このスパイめ!!
難民を装って、この国の何を探らんとしていた!! この国に・・・この紫苑がいるのを知らないか!!!
不:ぁぁ・・・・・ぅぅぅ・・・・・。(おどおど)
紫:ナニを今更―――そのような哀れんだ目をするか!!(ググッ―――・・・)
――はっし――
紫:・・・・公主様―――
公:もう―――その辺にしておくがよい・・・。
紫苑が力任せに殴りつけ、この者の顎が割れてしもうたとき、一体何を聞き出せばよいのじゃ。
一時(いっとき)の感情に逸るのも構わんが、元の木阿弥にならぬようせんとな・・・。
紫:―――――・・・・公主様が、そういわれるのでしたらば・・・。(キラッ☆)
公:―――ご苦労であったな。
この者は、なにやら重要な任を帯びておる可能性があるので、妾と紫苑でそのことを取り調べようと思う。
――――よいな。
衛:えっ―――ですが・・・この女の取調べを、お二方が直(じか)に・・・って―――
公:―――――・・・・・よいな。(ギロ)
衛:あぁっ・・・・は、はい―――
〔この―――不審なる女が何者であるか・・・と、いうや否や、紫苑はその者を殴りつけたのです。
そう・・・この国―――ヴェルノアの内情を探らんとしに来た某国の スパイ として・・・
その憎さ余ってか、もう一発見舞わんとしたところ、それは傍らに来ていた公主様により制せられ、
よくよく鉾を収めさせられたのです。
そして、大胆不敵にも、ヴェルノアに潜入せんとし、依頼主からの重要な任務を果たそうとしていた―――
その行為に敬意を表し、これから公主様と紫苑の二人による尋問を行うべく、その女を連れ帰る―――と、いうようです。
そこで―――衛兵は、この女がそんなにも重要参考人なのか・・・とでも言いたげに、つい反論してしまうのですが、
公主様よりの度重なる・・・それでいて少し語彙が強まった物言い、それと、獲物を捕らえるかのような鷲のような一瞥―――
もう・・・そのことだけで、この衛兵は気が萎えてしまい、云うが儘になってしまったのです。
しかし、不審な人物を敢て城内へ―――とは、確かに国中の民や官僚たちに悟られないよう、
そのことを知っている者達の内で処理できる―――と、いう特性を持ち合わせているのですが・・・
もう一つの、この遣り様の特徴というのが――――・・・〕