≪八節;晦まし絵の如く―――・・・≫

 

婀:・・・ふうむ――――見たところ、朝議は滞りなく終わったようじゃな。

  尚書令、そのことはあとで聞くことにいたそう・・・。

 

  それより、皆―――このままで聞くがよい。

  今、諸兄らの胸中を語るならば、『ナゼに妾が 二人 も』―――・・・と、言う事であろうが・・・

 

  そのことは別に気にせずともよい、なぜならば―――この場におるどちらかの 妾 が、“影武者”だからじゃ・・・。

 

婀:(フ・・・)左様―――それは、妾であるやも知れぬし、この者――――・・・で、あるやも知れぬ。

  そこのところ、諸兄らには、判るかなぁ?

 

 

涅:(えっ・・・)そ―――それは・・・あなた――――様のほうでは??

雄:い・・・いや―――こちらの方なのでは・・・・

緒:(見―――見分けがつかない??)ど・・・・どちらも――――

玖:本物であるかのように見える・・・・

筮:で・・・でも、お二方のどちらかが―――偽者!!?

 

婀:―――・・・・・(ニヤリ)・・・・―――:婀

 

一同:――――――!!!!

 

 

〔それは―――双方とも“同じ”・・・・

今、二人ともが同時に微笑んだとき、口に寄った皺の加減までもが同じであることに――――

その部屋にいた、紫苑を除く官僚の総てが慄(おのの)いたのです。

 

しかも―――・・・〕

 

 

公:・・・・のう―――“影”よ。

  それはそうと、そなたが出来たその経緯を、この呆ッ気にとられておる者達の前で話してみるがよい。

 

婀:ふぅむ―――・・・そうじゃのう・・・

  なれば―――ナゼ妾が、自分の“影”を作る必要性に迫られたか・・・

 

―――それは―――

 

婀:―――妾の敵は、思うておったより“多い”・・・と、言うところかな。:婀

 

 

涅:(むぅぅっ―――! は・・・話すタイミングやイントネーションまで・・・)

雄:(その“総て”が同じ―――・・・これでは・・・)

緒:(い・・・いや――――それにしても、このようなことを他人が真似をするにしても、その限度を超えてしまっている。)

玖:(ま―――まるで悪夢を見ているかのようだ・・・)

筮:(し―――信じられない!)

 

紫:(はぁ〜〜・・・ルリに、婀陀那様まで――――二人とも、悪ふざけが過ぎるわ。)

 

 

〔公主・婀陀那の姿をした一人が、どうして自分の“影武者”を創らなければならなかったのか―――

その理由と経緯を、もう一人に話させた・・・ですが、一人目もそうならば、もう一人もそうであるように、

自身がどちらか判りづらくさせるように、ぼかしたような表現―――・・・

しかも、すぐそのまたあとにて、二人同時に口を開いたとき、総ての何もかもが一緒―――・・・

 

それも、右から聞こえているのも、左から聞こえているのも、

その“語り”“加減”“間合い”などがすべて同じ――――・・・そう、まるで・・・サラウンド・スピーカーの如くに・・・

聞こえていたのであれば、誰しもが驚愕せざるをえなかったことでしょう。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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