≪四節;一転して・・・≫
〔それはそうと―――その日のアヱカとホウ王子は・・・〕
ホ:ねぇ―――お姉ちゃん・・・じゃなかった、太傅様。
ア:(ウフフ・・・)よろしいのですよ―――王子様・・・いつも通りの呼び方で・・・。
それに、わたくしも未だに 太傅 という呼ばれ方に慣れていないものですから・・・。
コ:みゅ・・・。
乃:・・・みぅ。
ホ:それにしてもね・・・この樹の下にいると、とっても気分が良くなるんだ。
どうしてなんだろう―――・・・
ア:(沙羅の樹・・・)
それはね―――この樹には、とっても不思議な力が宿っているからなんだよ・・・。
昔―――この樹の下で、とっても偉い人が悟りを開いたり・・・
この樹の下では、誰しもが争わない―――いや、争おうと思っていても出来ない・・・・
なぜならば、この樹には普通にある樹よりも、人や獣・・・
あるいは魔物でさえも鎮めてしまえる物質を、より多く分泌しているというからね・・・。
ホ:ふぅ〜ん・・・だからなんだ―――・・・
この樹の下にくると・・・なんだかふんわりとした気持ちになってくるの・・・・
ア:(フフ・・・)そうだね―――そういえば・・・シャクラディアの庭園にも、この樹がたくさん植えられていたなぁ・・・
ホ:え・・・っ? シャクラディア―――って、古い昔の遺跡なんでしょう?
ア:うん―――そうだよ・・・。
私も・・・この国に初めて来たとき、一番最初に寄った処―――って、あそこだったなぁ・・・。
コ:――――zzz・・・。(スヤスヤ)
乃:――――zzz・・・。(すぅすぅ)
ホ:あ―――・・・コみゅちゃんたち眠ってるよ・・・。
そういえば・・・なんだかボクも眠たくなってきちゃった―――・・・
ねぇ・・・お姉ちゃん、ちょっといい?(うとうと)
ア:しようがありませんね―――それでは、三刻半余りお休みする事といたしましょう・・・。
〔彼女たちは、今、ウェオブリ城の東の外れに昔から根付いていると云う、沙羅の立木―――・・・
その樹の下で、その樹の効能や往時の懐かし話に、花を咲かせていたのでした。
そして、日差しの柔らかさや、樹の効能によって、いつの間にか寝付いているコみゅ・乃亜姉妹に触発されるように、
やがて幼い王子様も、また一時(ひととき)の安らぎにその身を委ねるのでした。
それから―――三刻半余り経った頃、ホウ王子が目覚めたときには、
なぜかしら自分の身が、あの沙羅の樹の下ではなく、城内の自分の部屋の寝台に寝かされていたこと―――
それと、いつになくせわしなくしていたこの国の官僚たち・・・その事に気付くのでした。〕
ホ:(え・・・)あれ―――?ここは・・・
ねぇ―――お姉ちゃん、どうしてボク自分の部屋に・・・
ア:ああ・・・お、王子様―――(ホロリ)
ホ:(えっ?)ど―――どうしたの?お姉ちゃん! 涙なんか浮かべて・・・もしかしてまた母さまに??
ア:いえ――――実は・・・
〔それよりも、幼い彼が一番に不可解に思ったことは、自分にあらゆることを教えてくれる、
明るくて優しい女性が・・・なぜかしら、涙を浮かべながら押さない自分を、まるで哀れむような目で見ているということ。
それを見たホウ王子は、以前自分の母がこの女性に対して、していたことを思い出し・・・今回もそうではないのか―――としたのですが、・・・
実は、このとき―――アヱカは迷っていたのです。
幼き王子様が眠っている間に、起きてしまった出来事を・・・その真実を話すべきか、どうかを―――
しかし、自分が涙ぐんでいる理由を、あらぬ方向でとられていたため、アヱカは真実を話す決意をしたのです。
そう―――辛い・・・辛い・・・“真実”を・・・・〕