≪六節;世継ぎの道理≫
〔しかし―――家族の一員である幼いホウにとっては、それで済まされたとしても、
国家の一員である官たちには、それでは済まされないことがある―――
そのことを知っているため、この二人は幼な子を自分の部屋に戻したあと、
この次に起こりうべき事態を、考慮し始めたのです。〕
リ:アヱカ殿・・・ホウがいなくなったので、改めての相談なのじゃが―――・・・
ア:・・・その前に――― 一つだけ確認をしておきたきことがございます・・・。
リ:―――なんじゃ・・・
ア:世継ぎの道理―――判っておりますでしょうか。
リ:(フ・・・)妾も、今そのことを問おうと思っていたところじゃ・・・。
無論、その道理は弁(わきま)えておる。
ア:(ほ・・・)良かった―――
リ:・・・じゃが―――余り、このことを妾の口から申すのは妥当ではないのじゃが・・・
太子様は、お身体が弱くある―――と、いうこと・・・
ア:確かに―――されど、『長子を世継ぎに抱かなかった国家が、繁栄しなかった』・・・のも、また自明の理でありますれば・・・。
リ:それに・・・ホウも未だ若い、いや―――若いというには、過ぎるほど幼すぎる。
ア:そこまでご承知でしたらば、あとはこの愚臣めにお任せ下さい。
例え―――この身が害されましょうとも、ホウ君(ぎみ)はお護りいたしますがゆえに・・・。
〔その・・・若い太傅の一言は、まさに“国家を憂うべき者”の言葉でありました。
その言葉を聴き、王后は『やはり忠臣の眼に狂いはなかった』としながらも、また同時に、
この若い太傅のことを嘲罵し続け、辺境の地へと追いやった事を、深く省みていたのでした。〕