≪六節;棗色の肌を持つ者≫

 

 

〔その一方で・・・女頭領の率いる、ギルドの面々は―――・・・〕

 

 

盗:頭ァ、ヤツ等・・・どうしたんスかねェ?

 

婀:フ・・・まあ、妾達には、関係のない事よ・・・

  厄介事に巻き込まれぬうちに、早々に、ずらかるといたそう。

 

盗:へい・・・っ。

 

 

〔どうやら、この機に乗じて、退散する方針のようです。

―――と、ところが・・・・〕

 

 

婀:オオ!妾としたことが・・・大切なモノを忘れておったわ。

  妾はそれを取りに戻るがゆえに、お主等は一足先にギルドへ戻っておれ・・・・よいな。

 

 

〔なんと女首領、帰路の半ばにして忘れ物を取りに戻るようです。

 

ところで・・・肝心の、あの二人は・・・と、いうと・・・〕

 

 

ア:あの・・・少し、質問してよろしいですか?

ス:・・・なんだね?

 

ア:逃げるのでしたら・・・もう少しばかり、歩くのを早めたほうが宜しいのではないか・・・と。

ス:まあ・・・ワシと、あんたさんの、その足だ・・・いくら急いだところで、あいつ等の足に敵うはずもない・・・。

 

ア:そ、それでは・・・みすみす、また―――捕らわれの身・・に、なれ・・と?

ス:そこまで云っちゃいないよ・・・。

  だがね、これから起こる事の為に、体力を温存しときたいんでねぇ・・・。

 

ア:まぁ・・・。

 

 

〔折角逃げ出しても、あまり急ぐことをせず、敢えてゆっくりと歩きながら・・・の、ようです。

ですが・・・それでは・・・

 

そう、それでは、戦場を駆ける兵の足にはすぐに追いつかれてしまうのです。

その証拠に・・・一番にあの陣を飛び出した、若い騎士が・・・・〕

 

 

騎:おい・・・・待てや、このヤローが・・・

  なんだと?これから起こる事の為に、体力の温存?? ナメた事を、ぬかしやがって・・・

 

ス:おお・・・っと、こいつはまずいねぇ。

  もう、追いつかれやしたかい。

 

騎:てめぇ―――いい度胸してんじゃあねぇか。

  このオレ達の手から、その女を奪還しようなんてよぉぉ・・・

  気に入ったぜ!ナマスにしてやろうじゃねぇか!!

 

ア:ああ・・・っ、も、もうお止め―――え・・・っ?

 

ス:へヘ・・・ヘへ〜〜―――町で見かけたときにゃ、あんましいい女だったモンでしてね?

  ま・・・ホンの出来心なんでさぁ―――許しておくんなさいよ。

 

騎:いやァ・・・ダメだね。

  お前みてぇなヤツは、一度甘い汁を吸わせると、どこまでも付け込んできやがる。

ス:ほぉ〜〜・・・じゃ、どうしなさいますんで・・・?

 

騎:決まってんだろ―――が! 即断即殺よぉぉ!!

 

ス:フフ・・・いやァ、怖い―――怖いねぇ〜〜どうしても、血を見たくて仕様のない・・・ってとこのようだ。

  ところで・・・他の皆さん達は、まだ・・・来ていらっさらないようで〜?

 

騎:っっ――――たりめぇ――よ!! てめぇ如き、このオレで十分だ!カクゴしやァがれ!!

 

ス:・・・・・・そうかい。

  ―――だったら帰んな、あんたじゃ役不足だ。

 

ア:(ええっ? こ・・・この人の・・・声―――今と、先程とは・・・全然違う??)

 

騎:な、なんだと?! ち、調子に乗るんじゃあねえ!!

  ―――死ねやあっ!!

ス:―――・・・

 

 

〔目の前の・・・姫君の背より低い、この小男にバカにされ―――

若き騎士は相当に腹が立ったようで、手持ちの剣を振り下ろしたのですが・・・・

この小男の盗賊、身をかわすついでに着ていたボロを相手に投げつけ、相手と姫君の視界を、一瞬奪ったのです。

 

そして――――次の瞬間、この若き騎士と姫君は・・・明らかに、今までと違う光景を、目の当たりにしていたのです。

 

なぜなら・・・〕

 

 

騎:く・・・っ!

  ―――ンな・・・・あ・・・ああ?!  お・・・・お前ェ・・・・。

ア:えぇっ!!  ス―――ステラ・・・さん??

 

 

〔そう・・・なぜなら、そこには、この若い騎士の身長(189cm)を、はるかに上回る、2m10cmくらいはあろうかと思われる、

「棗色の肌をした大男」が、すでに持していたからなのです。〕

 

 

ス:だから・・・てめぇじゃあ役不足・・・つったんだよ。

騎:な・・・っ!

  ―――っっ・・・く! お、おのれえぇ!何を云いやがるかあぁ!!

 

ス:フン・・・へったクソだねぇ。

  こんなトロイ剣じゃ、ハエも殺せやしねぇぜ。

 

騎:ぅるせえ!喰らえぇ!!

 

ス:おお・・・っと、ヤケはいけねぇぜ、騎士さんよぉ―――ほぅら!!

騎:ぐぅあ・・・・かあっ!! ―――ク・・・っ、クソ・・・っ!!

 

 

ア:(す・・・すごい! 流れるような足捌きから、転じて素早い反撃・・・とは、この方・・・本当は、何者なの?)

 

 

騎:へ・・・・ッ!中々・・・やるじゃあねぇか―――

  こっちも、お前が丸腰だったモンで、つい油断していたぜ・・・。

 

ス:ほほ―――う、丸腰・・・ねえ、そう解釈すんのは、そっちの勝手だが・・・・・。

  なんなら、見せてやろうか・・・この、ワシの得物を・・・。

 

 

〔今まで小男の態を演じながら、一転して本来の姿に早変わりをした盗賊・・・

しかも、体術などには相当自身があるようで、騎士である者の剣を全く寄せ付けなかったのです。

 

それに・・・並大抵の者ならば、それを見ただけで彼の実力の定かというものを知るモノ―――

ですが・・・頭に血が上りきった者からしてみれば、どうだったでしょうか・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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