≪七節;刃の莫き、名刀≫
〔それに―――若い騎士より、丸腰を指摘された盗賊の大男は・・・
すると・・・腰に差していた、「剣の柄」――――の、様なものを取り出したのです。〕
騎:な・・・なんだそいつは・・・つ、柄・・・だけだと??
てめぇ―――ナメきるのも、大概にしとかないと・・・
ス:フ―――・・・「我が剣は、常に我と共にあり・・・喩え刃がなくとも、己自身の力で創り出す・・・」それが、この剣のあり方なのさ・・・
まあ・・・凡人のお前ェさんには、難しいこったろがねぇ・・・。
ア:えぇっ?!(い―――今の伝承・・・も、もしかして・・・あの剣は・・・!!)
騎:う・・・・な、ナニ??
ス:ぬあぁあああ!!
〔それは・・・確かに見かけの上だけでは、「剣の柄」のようなものでした。
いや・・・それだけならまだしも、悪く見れば単なる「木の枝」にも見えなくもなかった―――
けれど・・・所詮、上辺しか見えていない者は、この・・・伝家の秘刀を手にする資格すらないのです。
それに―――今、盗賊の大男が口にした伝承を、なぜか姫君も知っていました。
いえ―――実は彼女だけではない・・・
ある、秘められし力を持つ「刀」の伝承は、この大陸に住まう者ならば誰しもが知っていることでした・・・。
それも―――奇しくも、ある「古(いにし)えの皇」の伝承と共に・・・
そして―――それが単なる木の棒ではないことを実証するため、
盗賊の大男が、気合いもろとも・・・その柄に気を込めると、その柄の両端からは光の刃が!!
そう・・・その剣こそ―――・・・〕
ス:ふうぅぅぅ・・・・。
騎:う・・・うおぉ・・・こ、これは・・・
ア:(や、やはり!! あの剣こそ、伝説の剣―――「緋刀貮蓮(ひとうにれん)」!!
その・・・正しき心無くば、扱うる事の出来ないと云われている―――あの光の聖剣が・・・!!)
で・・・では、あの方が―――・・・
ス:・・・覚悟は・・・いいか・・・。
騎:うぅ・・・・ぐ・・・・ぅぬおぉおおお!
ス:ぬうぅん!
〔勝負は、一瞬にして、ついた―――・・・
所詮、この世に斬れぬものさえ、ない・・・と、云わしめた伝説の名刀を前に、目の前の者は・・・ただの、鉄と、肉の塊と、化していたのです・・・。〕
ス:ふぅぅ・・・・。
ア:あ、あの・・・もしや、あなた様は・・・
この大陸に伝わるところの―――「清廉の騎士」・・・なのでは?
ス:・・・・間違っちゃあ、いけませんぜ、姫さん・・・。
ワシは単なる、一介のコソ泥だ・・・こいつも、道端でくたばってたヤツのを、ちょいとばかし失敬しただけなんでね・・・
ア:いえ・・・でも、その「緋刀貮蓮」は、正しき心の持ち主にしか扱う事の出来ぬ業物と・・・
ス:(ふぅ・・・ヤレヤレ・・・) ―――・・・ん?
ア:(え・・・?)は・・・はあぁぁっ!
〔目の前の一難が去った後で、姫君はこの盗賊の大男に問いかけたのです。
それは・・・この者が、曲がった世を正しき方向に導く、「清廉の騎士」―――その人・・・ではないか・・・と。
でも、疑われた本人は、激しく否定をしたようです・・・が―――
するとここで、背後に騎馬の音を確認した盗賊の大男、姫君も、慌ててその方向を見てみると・・・
そこには、約十名もの兵を連れた・・・あの騎士団団長がいたのです。〕