≪三節;報告と献策≫
〔そして―――ウェオブリに無事帰還を果たし、この度の戦の報告を、
司徒と録尚書事になするアヱカとタケル。〕
ア:ただいま、帰還いたしました―――
イ:おお、アヱカ殿、無事に戻りましたか。
セ:それで・・・損害のほうは?
ア:はい―――私たちが出兵する間のものでしたらば、負傷した者はかなりいましたが、
この度の私たちの出兵からは、無に等しい限りといえます。
〔無事に・・・貸した兵を損なうことなく、また、その姿を二人の官僚の前に表わせたアヱカ・・・
そのことに安堵の胸を撫で下ろしもするのですが、ではどうしてこの時機にヴェルノアの出兵騒ぎが―――
とも思えなくもなく・・・・
すると―――アヱカは、予(かね)てからタケルに云われた通りの事を、イクとセキの前で奏上したのです。〕
ア:時に―――此度の戦でフ国軍の損害はなかったのですが・・・
私には、どうしてもヴェルノアの出師の意図が分からない・・・
そこで、かの国に外交の大使を派遣してみてはいかがでしょう。
イ:外交の―――大使・・・
それはもしかすると、此度の出師の意図を確かめる―――と、いった意味合いのものですかな。
ア:いかにも、その通りです。
ですが・・・これも一つ間違えでもすると、かの国を刺激・・・憤らせる事にもなりかねません。
セ:ふむ―――確かに・・・おかしな質疑応答や、変に相手の肚を探るようなものであれば、
たちどころに、その大使の命がなくなってしまうのは明白なこと・・・。
イ:それに―――公主は、そういうことにも長けている。
こちらにそういう意図とするところがないにしても、あれよあれよという間に、そういう風に導き出され、
結果、口実を与えてしまうことにもなりかねん―――・・・
ア:そこで―――この度は、この私がその任を承りたく、申し上げる次第でございます。
イ:―――・・・よろしいのか、行っても・・・必ずしも実を結ぶとは限りませんぞ。
セ:それどころか、サイアク、その地にて果てるやも・・・
ア:はい―――そのことは覚悟はしております。
ですが・・・私も涅槃に旅立つのには、一人では心許(こころもと)ない・・・
ゆえに、一人―――従者であるタケルを供として、一緒に連れて行けることを許し於かれたい。
イ:(ふぅむ・・・)よし―――判りました。
あなたにそこまでの覚悟がおありならば、臨時に 大鴻臚 に、任じるとしよう。