≪五節;引き離された主従≫

 

 

〔それはそれとして―――翌朝になって、城からの迎えの者がきたときに、

実に意外な申し出に、言葉を失うアヱカが・・・〕

 

 

ア:な―――なんですって??! タ・・・タケルさんと、わたくしを―――

 

使:はい―――。

  此度のフ国よりの大鴻臚様と、その従者は別々のお部屋に通すように・・・と、

  公主様御ン自らが―――

 

ア:そんな―――・・・あの、タケル・・・

 

タ:公主様御ン自ら―――とは、わが主に対して個別のおもてなしがある・・・と、でも。

使:・・・・・いえ、ただ私は、自らの君主のお言葉、そのままに伝えただけで御座います。

 

タ:(ふぅむ・・・)そういうことなれば―――

  接見する前におかしな疑惑に駆られても、双方面白からぬこと・・・

  ゆえに、承知仕りました―――との旨、よろしく公主様にお伝え願いたい。

 

使:かしこまりまして―――

  (中々の切れ者だ・・・無理難題とも思える公主様のお達しを、いとも簡単に切り返すとは・・・

  中華の国は、恐るべき人材を受け入れたようだ―――・・・)

 

 

〔そう―――それこそは、アヱカとタケルを・・・この宿のこの場より切り離して、公主様のいるマジェスティック城へ―――

しかも、別々の部屋に通すように・・・と、いう、いわば無理難題とも取れるようなことを吹っかけられていたのです。

 

でも、それがどうして無理難題なのか―――・・・それは、これによりアヱカはタケルの助言を仰ぎたくとも、

一緒にはいないのでそういうことは出来にくくなる・・・・

 

それでいよいよもって、前(さき)にイクやセキの云っていたように、

自分がそういう意思でないにしても、相手に失礼に当たる行為をなし、結果――――

と、いう最悪の事態が、アヱカの脳裏を過ぎってしまったのも、また事実だったのです。

 

しかし―――そこへ行くともう一人のタケルは、寧ろそうなることを待ち望んでいたかの如くに、

実に淡々とした様子で、逆に使者の方が彼に感心を抱くしまつだったのです。

 

 

その一方――――アルルハイム城内では・・・公主様が、遅めの朝食を取っている最中でした・・・〕

 

 

婀:(パク――)・・・・ところで―――中華の国よりの大鴻臚どのには、こちらの使者を向かわせていたであろうな。

 

緒:(緒麗美耶)・・・・はい。

  ですが―――この案件、少々きつすぎるのではないでしょうか。

 

公:ははは―――そこのところの読みがまだ甘いな、オリビヤは。

 

緒:はぁ・・・・

 

婀:それよりも―――此度の大鴻臚どのは、中々出来るよう・・・だとか。

公:“出来る”―――というモノの尺度では測れぬらしいぞ。

  何しろ一つの州の公であり、幼君の養育のお手伝いをも兼ねていると聞き及んでおる。

 

緒:(な―――なんと!!?)

 

公:しかも―――その者は、妾とお年もそう変わらぬ・・・と、云う事らしい。

婀:然様―――か・・・

  いかんな、そんなお方とじかに折衝をせねばならぬとは、それでは妾の粗暴な一面が出てしまうやも知れぬ・・・。

 

  ――――のう、ここは一つ、お主が妾と代わってそのお方と会ってはくれぬものじゃろうか。

 

公:(フ・・・)そなたが嫌がる事を、他人の妾に押し付けてどうしようと云うつもりじゃ。

  代わってやること―――それ自体は問題ではないが・・・もし妾のほうが、その者の返答に窮してしまったとき、

  赤の他人を大事な場に送り込んだことが世に知られると、恥の上塗りとなるやも知れぬぞ。

 

婀:むむぅ〜〜―――・・・然様・・・であるよなぁ・・・。

  やれやれ―――このようなことになるのなら、軽率な行動は差し控えるべきであったか。

 

公:それこそ『後の祭り』―――と、云ってやりたいところじゃが。

  本当は会ってみたいのではないのか・・・その、大鴻臚どのに・・・。

 

婀:(フフ――)やれやれ、もう一人の妾であるそなたにそこまで云われてしまうとはの・・・。

  いかにも―――今一度お会いして、その成長振り・・・

 

公:ぅおっほんッ―――! それより先は禁句じゃぞ・・・何より、オリビヤが聞いておる。

婀:(フ・・・)然様―――で、あったな。

 

緒:(もぉ〜〜かんべんしてぇ〜〜―――!)(ぐるぐる)

 

 

〔そこでは、このあと接見する予定となっている、フ国の大鴻臚・・・アヱカの人物評定がなされていたところでした。

 

自分とそう違わないお年頃なのに、一つの州の公を勤め、幼い王子の養育係である“太傅”を兼ねている・・・

しかも、今回は外交上の折衝役を務め上げる大鴻臚までも―――・・・とは、

さすがの公主様も腰が引かざるを得ない・・・と、云ったところのようです。

 

ですが、もう一人の公主様より、『本当は会いたくてたまらないのではないのか』との一言に、

婀陀那はついぞ本音を漏らしそうになっていたのです。

 

 

それからは―――定例の朝議が執り行われ、これから自国の取りうるべき方針を決め、

そして、フ国・大鴻臚であるアヱカとの接見が行われようとしていたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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